安浪よくも悪くも今は昭和的なやり方についてこられる子って、ほとんどいないと思うんですよ。勉強だけでなく、スポーツの世界でもそうですよね。箱根駅伝なんかを見ていても思うのですが、昔は駅伝の監督といえばもうとにかく厳しく鍛え上げる、本番中も伴走車からの声かけは煽りまくるものでしたが、そんな監督たちも最近は選手の良いところを見て褒めて伸ばしている。やっぱり伸ばす監督って子どもをよく見て時代によって変えているんだな、と思います。同じように、子育てもこのような「しなやかさ」がすごく大事だと思います。

安浪京子さん

矢萩:一概に昭和的な方法が悪いとは思いませんが、まず第1にその子に合っているのかどうか。第2に時代に合っているのか。それを考えてから家族で話し合って合意形成をしていく手順を踏まないと、後々禍根が残る可能性が非常に高いんですよ。実際、そういう厳しい親の元に育った人たちから「やっと毒親から離れて自由になれました」みたいな話をよく聞いたりするので。それって望んでいる未来と違いますよね。そういう想像力も持って欲しいです。

負の可能性から目を背けるのは「無責任」

安浪:塾も少しずつ変わってきていますが、今でもとくに50代60代の先生のなかにはまだスパルタな考えの人も多い印象です。でも昔のように厳しくすると、子どもがついてこないばかりか、保護者からクレームが入る。だからちょっとずつ手綱を緩めているというのが現状ですね。

矢萩:昔は子どもを徹底的に管理したり、追い込んだりすることが塾の役割、と思っている人も多かったですからね。そういう日常が、成長にどんな影響を与える可能性があるか。成功体験ばっかりに目が行って、負の可能性から目を背けている。僕は無責任だと思う。

安浪:あと気になるのはお母様のスタンスですね。「主人は決めたことは最後までやり切る人で、その点は尊敬しています」と書いてあって、ご主人に対するスタンスはわかるのですが、お母様自身はお嬢さんにどのような受験をさせたいのかが伝わってこない。

矢萩:すごくおかしいと思っているのに、自分が中学受験経験者じゃないから言えないっておっしゃっていますが、そこは経験者かそうでないかは置いておいて、何が良い状態で、何が良くない状態なのかっていうのを客観的に見る必要があると思いますね。

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