なぜなら、脳のネットワークは、遺伝的素質がそこにある場合、能動的に予測する力が大きく働きやすいからです。「楽しい!」と感じるだけではなく、「こうすればもっといいんじゃないか」「ここはこのほうがうまくできるのでは」など、そういうふうに脳が働く時は、遺伝的素質がなんからのかたちで反応しているのかもしれません。
例えば、物理の授業で、分子の構造について先生が話しているのを聞いて、「前から知っているような気がする」という人や、天才と呼ばれるピアニストが、ある音楽を聴きながら「僕ならこう弾く」と曲が終わる前にオリジナルの曲まで作り上げたというような話があるのですが、これはまさに、遺伝的素質が反応して、脳が予測しているんじゃないかと考えられています。
親はどうしても「環境を用意する」「見つけてあげたい」と思いがちですが、子どもが自ら探しに行く、というときのほうが、そんな「好き」に出合えるような気がしています。
(取材・文/神武春菜)
※前編〈算数・数学が得意な子は、遺伝なのか? 親が与えた環境はどの程度影響するのか、行動遺伝学者が解説〉から続く
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