親子で顔が似ていると遺伝の影響を感じる人も多いでしょう。では、勉強の好き嫌いや学力にも、遺伝の影響はあるのでしょうか? 『教育は遺伝に勝てるか?』(朝日新書)の著者で、日本における行動遺伝学の第一人者である安藤寿康先生に、教育と遺伝の関係についてお聞きしました。
【データ】学力の高い家庭がやっている生活習慣とは?身長や体形に遺伝的要素があるように、学力にも遺伝の影響が必ずある
――容姿や体質などには遺伝の影響を感じる人も多いと思うのですが、勉強の好き嫌いや、得意・不得意も遺伝するのでしょうか?
あらゆる動物は遺伝子からできています。つまり私たち人間のあらゆる側面に遺伝の影響があり、容姿や身体、病気へのかかりやすさだけでなく、学校の成績や運動能力、勉強の好き嫌いや、得意・不得意にも、遺伝の影響がもちろん出てきます。
行動遺伝学では、双生児法といって、遺伝と生育環境が同じ一卵性双生児と、遺伝の影響は一卵性双生児の半分、生育環境は同じといえる二卵性双生児の行動指標の類似性を比べることで、遺伝の影響と環境の影響の因果関係を調べています。その研究によると、学業成績における遺伝要因はおおむね50%程度と考えられています。
ただそう言うと、お子さんの成績がなかなか上がらないことに対して、「私も勉強嫌いだったからな……」と諦め半分に話す親御さんもいらっしゃるのですが、それは「遺伝」に対するイメージがちょっと単純化しすぎた誤解に基づくのかなと思います。
どんな遺伝子がどのように学力に影響しているのか。それを考えるならば、例えばその教科の内容に対しての好き嫌いや向き不向き、学習に際して発揮される集中力や勤勉性のようなパーソナリティーの違い、学校や教室の雰囲気へのなじみやすさなど、さまざまな側面における遺伝的要因も考えるべきでしょう。単純に「成績」などの目に見える部分だけを見て、「親が苦手だから子どもも成績が上がらないんだ」などと判断するのは違うかなと。そもそもテスト問題だって、それを作った人の考え方が反映されていますし、それに対して、どんな遺伝子が、いつ、どのように影響しているかまで明らかにすることは不可能です。
次のページへ遺伝的要因が少ない教科は?