自分で自分に“成績”をつけてもらう
そこで始めたのが、「自己評価通知表」というものです。ふだん配られる通知表の評価欄を白紙にしたものをベースに、生徒自身が感じたことを評価する欄を加えたものです。
英語なら「英語圏に旅行したくなった」「外国人と話してみたくなった」、保健体育なら「自分なりの生涯スポーツの形が見つかった」「自分なりの技能の習得法が見つかった」など、楽しさや、生活、社会、人生と結びついたかなど、さまざまな成長にフォーカスしたものです。それらを生徒たち自身に、自分の通知表として作ってもらうのです。
この取り組みの中で分かったのは、意外にも多くの生徒が自分に高得点をつけられないということでした。個別にその理由を聞くと、やはり勉強は成績やテストの点数のために取り組んでいることがわかりました。学びの過程での楽しみにフォーカスできていないことや、自分を他人と比べる癖が染み付いていることを感じました。
さらに、全校生徒に教科ごとの印象アンケートを実施し、「好きで得意」「嫌いで苦手」「好きだけど苦手」「嫌いだけど得意」という4つの観点で自己認識を確認しました。
この結果、「嫌いだけど得意」「好きだけど苦手」と答える生徒が各教科で20%以上いることが分かったのです。ここに該当する生徒たちに、自分の好きや得意にもっと自信を持ってほしいと強く思い、どんな場面で得意・不得意と感じるのかを詳しくヒアリングしました。すると、「数学は、理解できるし楽しいけど点数につながらない」「物語を読んだり人の考えを知ったりするのは好きだけど、国語の授業にはついていけない」など、生徒それぞれの不得意ポイントが見えてきました。
この生徒たちの声をきっかけに、教職員はそれぞれ授業の仕組みを見直しました。単元ごとの終わりに行う学習のまとめを、レポート・プレゼン・動画などの選択制にしたり、生徒が苦手と感じるポイントを授業内でも丁寧にフォローできるようにしたりなど、改善していったのです。
次のページへ起きた4つの変化