学校で、学期の終わりにもらう通知表。その本当の役割とはなんでしょうか。東京都内の公立中学校に勤める中澤幸彦先生は、通知表を子どもたちの学ぶ意欲を高めるものにしたいと考え、「自己評価通知表」というものを作成しました。取り組みを続けていくと、子どもたちに4つの変化が起きたそうです。

MENU “通知表”は何のためにある? クラスメイトと比べて落ち込む生徒たち 自分で自分に“成績”をつけてもらう “自己評価通知表”で起きた4つの変化 一度は算数を嫌いになった息子が再び算数を好きに 通知表の使い方は大きな課題でありチャンス

“通知表”は何のためにある?

 東京都内の公立中学校に勤務している中澤幸彦(2児の父)といいます。教師歴は16年、うち14年間は保健体育科を担当していて、いまは特別支援教室の担当をしています。

 学校や家庭で配られる通知表。その目的とは何でしょうか。私は学校の生徒たちに、「通知表は自分の現在地と伸びしろを把握するための手段であり、自分の地図にしてほしい」と伝えています。子どもが学ぶ道は一本ではありません。四方八方に広がる可能性の中で、自分の位置を確認し、次に進む一歩を選び取るために通知表があってほしいと思っています。

 しかし、その本来の役割が見失われている場面に、自分の指導の中で出合うことがありました。

クラスメイトと比べて落ち込む生徒たち

 私が教員8年目のこと。前任校の公立中学校で1年生の学級担任と生活指導主任として勤務していました。私が担当した保健体育のテストで88点を取った生徒がいました。その生徒は普段50~60点を取ることが多かったため、初めて出した高得点をとても喜んでいました。

 ところが、テスト返却のとき、私は何気なく平均点(89点)を発表してしまいました。生徒一人ひとりが授業を楽しんで、学びに向かった成果で、この高い平均点に私もとてもうれしかったのです。

 しかし、その瞬間、その生徒の表情が曇りました。「自分は平均以下なんだ」と感じたようで、「最悪……」と言ったのです。せっかく成長を実感できていたのに、平均点と比較したことで自分への評価が下がってしまったのです。

  毎回学期末に通知表を返却するときも、多くの生徒がクラスメイトと見せ合ったり隠したりしています。自分の評価が、クラスメイトよりも優れているかどうかをすごく気にしているのです。

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中澤幸彦
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