約4万2千坪(東京ドーム約3個分)もの敷地のうち、半分以上が緑地。栃木県那須郡の「リゾナーレ那須」は、自然を遊びつくす特別な体験ができるリゾートホテルです。敷地内の田んぼや農園でスタッフが栽培したお米、野菜、ハーブをレストランで提供するほか、土地を生かしたアクティビティーも充実。なかでも注目したいのは、お米作りを体験できる「お米の学校」です。日本の原風景に思いを馳せるとともに、お米の魅力を一層感じられる食育プログラムに参加してみませんか?

田んぼが広がる美しい日本の原風景を未来へ

 リゾナーレ那須は、自然に囲まれた静かな環境で四季折々の農作業を体験できる「アグリツーリズモリゾート」。開業は2019年、敷地内に地元の農家が所有する田んぼがあり、施設として有効活用する方法が検討されていました。そこで取り組んだことの一つが、お米の魅力を伝えるとともに、日本の農業が抱える課題解決に貢献することでした。

 この50年ほどで、田んぼの面積は約30%減り、1人当たりのお米の消費量は半減しました(※)。一方で、昨年から続くお米の高騰は国民の大きな関心事となっており、わたしたちにとってお米は生活に欠かせないものであることを実感している人も多いのではないでしょうか。

 田んぼが広がる美しい日本の原風景とそこに生息する生き物、豊かな自然環境を未来に残したい――。この思いに共鳴した地元農家「稲作本店(FARM1739)」協力のもと、親子で農作業を体験できるアクティビティー「お米の学校」が立ち上がったのです。

※農林水産省「令和5年耕地面積」「令和5年度食糧需給表」から

リゾナーレ那須遠景。コンセプトとする「アグリツーリズモ」は、イタリア語で「農業(AGRICOLTURA)」と「観光(TOURISMO)」を組み合わせた言葉。天然生林に囲まれた敷地内には清らかな川が流れ、田畑が点在する

田植え、稲刈り、脱穀・炊飯を家族で体験

 今年の「お米の学校」は5月から10月にかけて、「田植え」「稲刈り」「脱穀・炊飯」の3工程に分けて開催されます。5月上旬に体験できるのは、参加者全員が横一列に並んで行う「田植え」。治水や苗について学んだり、田んぼにいるおたまじゃくしやアメンボを採ったりと、普段なかなかできない体験だけに、過去最も人気を集める回です。

田植えはほかの参加者と一列に並び、手作業で行われる

 9月末~10月上旬に行われる「稲刈り」では、実際の収穫を体験。鎌の扱い方や、稲刈り後の稲を天日干しにより乾燥させる「はぜかけ」を学びます。刃先の鋭い鎌に触ることは普段なかなかありませんが、意外にも大人より子どものほうが物怖じせずに扱えることが多いようです。

刈り取った稲を束ね、天日干しする「はぜかけ」を行う

 10月中旬〜下旬の「脱穀・炊飯」は、昔ながらの足踏み脱穀器を使った脱穀、籾摺り(もみすり)などを体験します。お米の学校では毎回、体験の最後に羽釜で炊いたご飯をおむすびにして食べることができます。「田植え」「稲刈り」ではスタッフが炊飯しますが、「脱穀・炊飯」では参加者自身が羽釜炊飯にチャレンジ。薪をくべて火加減を調整しながら丁寧に炊き上げたお米は、おいしさも格別です。

全てのプログラムの参加者に、 この田んぼで収穫した新米が 届けられる。お米の学校での体験を振り返りながら、自分たちで育てた新米を食べることができる

 開催ごとにお米に関するミニクイズやミニレクチャーも用意されており、小さな子ども(対象年齢4歳以上)から大人まで楽しめる内容になっています。所要時間は各回1時間30分~2時間。長靴、作業着などの備品は用意されていますが、汚れが気になる人は着替えを余分に持っていくのがお勧めです。

「お米の学校」専用サイトはこちら>

参加者自身も「生産者の一員」として、お米に親しんで

 リゾナーレ那須には自然が大好きで、敷地内のことを熟知するスタッフがそろっています。その1人、森田梨那さんの実家は和歌山県のみかん農家。高齢化や後継者不足は全国の農家共通の課題であり、農業と観光を掛け合わせた魅力発信に以前から関心があったと話します。

 ホテルスタッフはフロント、清掃などの仕事と並行し、大切に田畑を育てています。当初、「お米の学校」は地元農家「稲作本店(FARM1739)」監修のもと行われていましたが、4年目にあたる24年からは、スタッフだけで田畑の管理やサービスが提供できるようになったそうです。

 わずか600kgからスタートしたお米の収穫量は右肩上がりで成長を続け、24年には2130kgに。「ようやく、『朝食で提供するお米は、すべて施設内の田んぼで育てたもの』と言える状態になりました」と森田さんは振り返ります。

「お米の学校」参加者・収穫量の推移

「特に夏場はスタッフ一丸となって虫や雑草の除去を行うなど、管理が大変です。だからこそ、私自身も『しっかりと味わって食べよう』と思うようになりました。自分が普段食べているお米や野菜が作られる過程を知らない人は多く、子どものころから食に関わる経験をすることはとても大事なこと。体験を通してお米作りの楽しさや農家さんの苦労、やりがいを感じ取ってほしいと思います」

 とはいえ「堅苦しくならず、楽しい思い出づくりを提供したい」と語る森田さん。そのため25年度からは座学の時間を減らし、チェックイン後に渡すお米や田んぼにまつわる資料を使って各自で事前学習してもらう方法となりました。

 体験した家族からは、「子どもが泥の中に入るのを嫌がると思ったがとても楽しんでいて、また絶対に行きたい」「普段パンしか食べない子が、『おいしい』とたくさんお米を食べていて驚いた」といった声が寄せられます。参加は1回だけでも楽しめますが、すべての工程に参加する人や、リピーターも多いといいます。

羽釜炊きご飯をおむすびして味わう体験は毎回実施されるのでお楽しみに

「炊き立てのお米のおいしさを味わうことはもちろん、作業工程や農家の努力を知ることで、普段の食事や買い物でも違った視点で商品選びができるようになると思います。小さな変化ですが、こうした経験を重ねることで将来の選択肢も広がるかもしれません。一緒に農作業をすることでお客様自身が『生産者の一員』として誇りを持ち、食育につなげていただけたらうれしいです」

 毎日食べるものやその製造過程、栄養素などについて知ることは、生涯にわたって健全な食生活を実践し、豊かな心と体を形成するのに役立ちます。ほかにもリゾナーレ那須では、朝の森さんぽやオリジナルハーブティーづくり、星空観賞など、四季折々のアクティビティーが満載。都会の喧騒から離れて日本の原風景に触れる滞在は、自然を美しいと思う感性や感謝の気持ちを育み、子どもの成長に大きな影響を与えてくれることでしょう。

「お米の学校」のほかにも、野菜やハーブの種まき、収穫を体験できるファーマーズレッスン(左)、リスが食べたクルミの殻や松ぼっくりを集める森のトレジャーハント(右)など、自然を堪能できるアクティビティーがたくさん!

「お米の学校」専用サイトはこちら>