中学受験を考えたとき、最初にぶつかる大きな壁のひとつが「親のサポートはどこまで必要か?」という問題。特に共働き家庭では、「仕事とどう両立するのか」と悩む保護者も多い。本記事では、4人の子ども全員を東大理三に合格させた佐藤亮子さんと、数多くの受験生を志望校合格へと導いてきた中学受験専門カウンセラー安浪京子さんの共著『中学受験の意義 私たちはこう考えた』の発売を記念して行われたセミナーから “中学受験と親の仕事”について語られたパートをお届けします。

司会:小4のお母様から、こんなご質問が届いています。「現在の仕事は裁量権が少なく、時間の融通がききません。子どもが学年を重ねていく中で、学習量も増えると思います。中学受験のサポートを続けていけるか不安です」とのことです。

佐藤:「不安です」と言っても、不安に思っているだけでは何も進まないですよね。中学受験をすると決めたのなら、「サポートをする」と腹をくくる覚悟が必要です。そもそも不安というのは、頭の中でぼんやり考えているから生まれるんです。だから、何時からどんなサポートをするのか、具体的に紙に書き出してみること。そうすれば、不安に飲まれている暇なんてなくなりますよ。

安浪:以前、佐藤さんに「もし佐藤さんが仕事をしていて、子どもが中学受験を迎えたら、どうしますか?」と聞いたことがあるんです。そうしたら、佐藤さんは「辞めるわよ」って即答されましたよね(笑)。

佐藤:ええ、たぶん辞めますね。

安浪:でも現実的には、組織に属していたらそう簡単には辞められないという方も多いと思います。正社員を辞めて時短勤務に変えたり、働き方を変える保護者もいますが……正直、フルタイムで働きながら納得のいくサポートをするのは難しい。全部は無理だと思います。

佐藤:無理ですね。どこかに偏りますから。

安浪:だから、家庭の中で「ここまでは親が見る」「ここからは塾や本人に任せる」と線引きすることも必要です。たとえば「ここまでパパやママがサポートするけど、それ以上はあなたがやってね」と明確に伝えておくとか。志望校のレベル設定もそうですが、どこかで落としどころを見つけるしかないと思います。それに、仕事を辞めたり時短にして、全力でサポートしたとしても、合格できるとは限らないですから。「仕事を辞めてまでサポートしたのに……」と親が思い詰めてしまったら、親子関係がこじれたり、「私の何が悪かったの?」って自分を責めてしまうかもしれませんよね。

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佐藤亮子
佐藤亮子

さとう・りょうこ/4人の子ども全員を東京大学理科三類に合格させた実績を持つ教育・子育てアドバイザー。著書に『佐藤ママの子育てバイブル 学びの黄金ルール42』(朝日新聞出版)、安浪京子さんとの共著『中学受験の意義 私たちはこう考えた』(朝日新聞出版)など。

安浪京子
中学受験専門カウンセラー/算数教育家 安浪京子

やすなみ・きょうこ/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は佐藤亮子さんとの共著『中学受験の意義 私たちはこう考えた』(朝日新聞出版)。オンラインサイト「中学受験カフェ」主宰。

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