おすすめポイント

 これを作ったら友だちが喜んでくれるだろうなと、あなぐまが想像している場面が毎回楽しそうに描かれていて、友だちを思いやることの喜びに満ちあふれています。りすが好きなりんごが実ったらりんごジュースやアップルパイを作って、うさぎが好きなにんじんを作ったらにんじんジュースやにんじんケーキでもてなして……と、読んでいるだけで子どもも大人も笑顔になってしまうはず。あなぐまの一生懸命な姿に、誰かのために何かをすることの尊さが伝わってきます。

 友だちのためにと張り切るあなぐまは、種や苗などを買いに町に向かう道中で毎回友だちとばったり出会い、自分が作らなくてもみんな好きなものを既にたくさん持っていることに気づかされます。せっかくみんなのためにと思っているのに……と、あなぐまはかんしゃくを起こしてしまうのですが、すねて部屋の隅で丸くなっているあなぐまに、好物の木いちごのジャムとジュースをおすそ分けしに持ってきたはりねずみは「きみが よろこぶと おもって もってきたのに」という言葉を投げかけます。実はみんなもあなぐまと同じように友だち思いなのです。それぞれの好物をあなぐまにおすそ分けするのは、あなぐまに喜んでほしいから。みんなとあなぐまの違いは、自分の気持ちや好きなものを友だちへの思いと同じくらい大切にできていること。自分を大事にしながらも、友だちも喜ばせることができるんだよと、そっと教えてくれます。

 作者のはせがわさとみさんによる、温かみのある色づかいとやさしいタッチの絵がおはなしの世界観にぴったり。絵の力も相まって、あなぐまが地団駄を踏んだり、すねたりするのも愛おしく見え、読後はほっこりした気持ちに包まれます。本作が気に入ったら、地続きの世界でおはなしが展開される『やまねこのこんにちは』もあわせてどうぞ。

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