――そういう人がいると育休を取るハードルが下がりますね。

 私の上司は、仕事に復帰した際、産後パパ育休制度にすごく詳しくなっていました。「育休を取っている間、遊んでいると思われて腑に落ちなかった」とも言っていました。

 ちなみに、上司は200万円の支給は受けていません。「自分の育休に間に合わせてって言ったのに!」と言っていましたけど(笑)。私の上司の場合、業務を引き継ぐ際に、各課の決裁権限を委譲してくれたので、仕事がしやすかったです。

子どもがいる社員が「優遇されている」と思われないために

――出産育児祝い金とともに、育休中の社員の業務をフォローする社員への手当「応援手当」を試験的に導入しています。

 両立支援制度を拡大するのであれば、絶対に、応援手当は制度化したかったのです。子どもがいる社員が優遇されていると思われてはいけない。育休を取る社員、その社員の仕事をフォローする社員への対応はどちらかに偏りが出てはいけない、と考えました。両方を同じ強度で進めていかないと、制度の仕組み自体がアンバランスになってしまう。社員の成長やウェルビーイングという意味でも、大事なことだと思います。

 これまでは自分が休んだことで、上司や同僚の仕事が増えてしまう、と育休取得者も気が引けるところもあったでしょう。気兼ねなく育児と仕事を両立して働き続けられるよう、会社全体で「応援する」という風土をつくっていくことを目指しています。

 応援手当支給の流れは、例えば、あるチームで育休取得者が発生したら、まずは全部の業務を引き継ぐ必要があるのか、効率化できる業務はないのか、業務を見直します。そのうえで、引き継ぐ必要がある業務は、同じチームの人に振り分ける。そして、その業務分担の割合に応じて、応援手当を支給します。

 支給額は、育休取得者の給与額の3割ほどを原資にして、引き継ぐ社員に割り振って支給します。育児だけでなく、介護休業の取得者をフォローする場合も対象です。

――今回の応援手当の制度は試験導入とのことですが、その理由は?

  日本企業のなかで、お祝い金と応援手当の両方を支給している事例があまりありません。まずは、やってみないとわからない。応援手当については、育休取得者の業務を課内の社員がどのように分担するかなど、現在、該当部門の管理職と一緒に考え手探りで検討している状態です。

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