肝心のKくんはというと、入試を終え「試験時間が30分も余った、絶対に合格してる!」と自信満々で戻ってきました。内心は半信半疑でしたが、それでも笑顔のKくんにずいぶん救われたとお母さんは振り返ります。自宅に戻ったあと、明日のためにと自ら塾の自習室に向かっていく姿を見つめながら、「結局、親はただただ、願い、祈り、見守るしかできないんだな」と感じたそうです。
最後まで第1志望を「諦めなかった」Kくん
午後6時。午前中に受けた第2志望の合格発表がありました。結果はなんと合格! 自習室に迎えにいくと、白い紙を持って走ってくるKくん。「先生がプリントしてくれたよ」と見せてくれたその紙には「合格おめでとうございます」の文字が。嬉しそうなKくんの姿に、お母さんは涙しました。
さらに、「まだ第1志望を諦めたくない」とKくん。第1志望の後期日程にもチャレンジすることにしました。倍率は20倍以上と狭き門。当日は朝から雪が降っていました。
「頑張ったけど、さすがに厳しかった。ご縁はありませんでしたが、息子は最後まで諦めず、中学受験を戦い抜いてくれました」
「諦めない」「逃げない」ことを中学受験で学んだ
幼いころから頑固で嫌いなことはやらない、嫌なことは避けるタイプだったKくん。そんな彼が、中学受験に向かう最後の最後で、苦手な勉強に向き合い、諦めない姿勢を見せてくれたことに、お母さんはとても成長を感じたといいます。
「彼はきっとこれからも、こうやって自分の道を一歩ずつ、確かに選び、歩んでいくのだと思います。中学受験を通して、息子は逃げない、諦めないことを学び、そしてその姿から私たちも、諦めず寄り添い、見守り、子どもを信じる大切さを教えてもらいました」
いまは第2志望だった学校に通っているKくん。ゲーム好き、勉強嫌いは変わらないようですが、どんなときでも自分の力を信じること、諦めず前を向いて取り組むことはいまも心の真ん中にあるようです。
(取材・文/稲垣飛カ里)