ようやく本人に自覚が芽生えたのは、1月8日のこと。その日、志望校の一つだった地方校の首都圏入試を受けたKくん。試験会場の緊張感、周りの受験生の真剣な様子、本番の難しい問題が彼の心に変化をもたらしたようです。
その日から、毎日なんとか過去問に取り組みはじめました。その学校の合格も自信につながり、1月末ころには第1志望の合格圏内ぎりぎりくらいのレベルまで過去問が解けるように。そうして迎えた2月の首都圏入試。本人が「行きたい」と思える学校だけ受けようと、2月1日、2日は午前午後とも、すべて第1志望と第2志望の受験で埋めました。
しかし、ラストスパートもむなしく、1日、2日の受験校はすべて不合格。努力の積み重ねがものをいう中学受験、Kくんママは頭では仕方ないと思いながら、「このままだと地方の学校で寮生活になるかもしれない」という寂しさと、「Kくんのやる気が最後まで続くのか」という不安が頭を駆け巡り、眠れぬ夜を過ごしました。
受かると信じて向かったT校に、まさかの大量の受験者が
2月3日。第1志望、第2志望を含め計5校に出願していましたが、午前は合格ラインギリギリの第2志望に望みをかけることに。午前の試験が終わり、午後はどこに挑戦するべきか……。お母さんは倍率速報や偏差値表とにらめっこしながら悩み、最後はKくんの意見を聞き、行きたいと思えるか、ではなく確実に合格をもらえそうか、という判断でT校を受けることにしました。T校の前年度の受験者数は約40人、倍率は1.3倍ほど。「きっとこれなら受かる。仮に午前がダメでも、明日のためのはずみになる」とお母さんは考えたのです。
都心から離れたT校へ向かうバスに揺られるうちに、お母さんは気づきました。「会場に向かう人が明らかに多い……」。Kくんを会場へ送り、保護者控え室に入って確信します。受験者が去年の倍以上だったのです。
絶対合格をもらえると思って受けにきたのに。完全に私の作戦ミス、これで落ちたら自信もなくなる。なぜ本人が行きたいと思える学校を受けさせてあげなかったのか。明日はどうしよう。ほかに受けられる学校はないのか……。お母さんの頭には後悔と不安が交錯し、Kくんを待っている間、涙が溢れました。
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