中高一貫校時代の部活の仲間が、いまも精神的な支えに

――「第1志望にこだわる必要はない」と思えたのはなぜでしょう。

 結果的に、進学した学校が本人に合っていたのだと思います。理由はいくつか考えられます。

 一つは、進学先には理系の子が多く、数学の授業の進度も速い学校であったため、算数や理科が得意だった彼にはマッチする環境であり、よりステップアップできたということ。学内でも成績優秀だったため、奨学金制度を活用することもできたようです。

 もう一つは、学校に通うことそのものを楽しめたこと。進学先は、自宅から距離があったのですが、鉄道好きだったため「長い時間、電車に乗っていられる」と日々の通学が楽しかったようです。部活は山岳部に所属し、部長を務めていました。部活の仲間たちとは卒業後も仲が良く、そのつながりはいまも精神的な支えになっているそうです。

――中学受験をしたことで、可能性が広がっていったのですね。

 そうだと思います。「中学受験をして良かった」と、後になって本人も口にしていましたから。小学生時代から得意な算数の基礎をしっかり固めて、中学からの数学も難なくこなしていきましたしね。彼自身、高校を卒業してから塾講師のアルバイトをして、中学受験を経験した子たちの基礎学力の高さを感じたそうです。特に算数・数学でそれを感じたようで、「算数を深く学んでいるから、その先の数学も本質を理解したうえで解いている」と話していました。

 彼はそれなりに算数が好きで得意だったのもあって、基本的な計算力が身についていきましたし、根気よく問題に向き合うこともでき来ていました。その後、数学にうまく移行できて得意なままいられたのも、前向きに算数に対して取り組んでいたことが一つの要因と言えるのではないかなと思います。

中学受験で「算数力」はつく?

――一般的に、中学受験をすると「算数力」がつくのでしょうか。

 受験算数をやれば勉強が得意になる、数学に優位だ、とは思いません。受験算数を教えていて僕自身は意味のあることだと考えていますが、やはりある程度、子どもたち側に楽しめていたり、前向きに課題に取り組んでいたりする姿勢は必要だと思います。

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