算数に限らず、中学受験の勉強をすることのメリットとしては、「合否」という結果のはっきりしているひとまずのゴールに向かってハードルの高い作業を根気よく継続することだと考えています。でもそれは中学受験でなければ得られないものではないと思っていますし、スポーツだったり、音楽だったり、ほかのことでも培えるのではないのかなと。やはり前向きに楽しめることに出合えている子は強いと思います。
――彼のその後の進路はどうなったのでしょう。
浪人の末、理系に強い難関大に進みました。その際も中高時代の先生方が親身になって寄り添い、背中を押し続けてくれた、と聞きました。中学・高校と、人が大きく成長する6年を見守ってくれる先生や仲間がいるのも中高一貫校の魅力かもしれません。大学では土木工学を専攻し、大学院にも進んでいます。
「防災」に関わる夢に向かって進む
――いまはどんな夢を?
「防災」に強い関心を寄せていて、“社会インフラ”と“情報”という二つの分野をつなげていくプロジェクトを立ち上げたいと考えているようです。自治体と連携しながら、ハード面とソフト面、両方を強化していきたい、と。
僕の塾がある江戸川区は水害のリスクが高く、彼には東日本大震災の記憶も鮮明に残っているため、災害の際にいかに早く周知するか、ということに課題意識があるのだと思います。母親、そして祖母と三人で暮らす彼にとってそれは人一倍強いものだと想像できます。
来年の春から、防災と街づくりという観点で第1志望とした企業で働くそうです。前向きに、やりたいことに向かう彼の夢をこれからも応援していきたいと思います。
(聞き手/古谷ゆう子)
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