入試問題で聞かれる3つの能力とは

矢萩:そもそも入試問題で聞かれている能力って三つしかないんですよ。一つはリテラシー。要するに何が書いてあるのかを読み取って、解答する力。つまり、読み書きがしっかりできるかどうか。二つ目が知識があるかどうか。三つ目は論理的思考力があるかどうかです。麻布の場合は時事や社会問題への興味は影響しますが、いわゆる受験的な知識はそれほど重視されません。リテラシーと論理的思考力があれば、学校の教科書レベルの知識で解けますよ、っていう学校なんですね。ただし、リテラシーと論理的思考力は相当なレベルが必要ですが。これは適性検査型の学校などでも同じです。学校によってその三つのなかのどれに力点が置かれているのかが違うんです。特に違うのが知識の部分です。

安浪:そうですね。最初のご質問に戻ると、まずはお子さんとしっかり話をしてみることからですね。今、その学校を第1志望にしていることが、苦しいのか、本気で行きたいのか。どんな答えであれ、まだ夏のうちは決め込まなくてもいいと思いますよ。本気で検討するのは10月、11月ぐらいでしょうか。

矢萩:中学受験って皆がやる受験ではないし、しかも浪人ができない、ワンチャンスの受験です。せっかくやるなら、これから長い人生を強く生きていくための糧になるような経験にしたいじゃないですか。だとしたら、頑張ってここまで届いたという経験と、頑張ったのに届かなかった、どうしたらよかったんだろうっていう経験の両方ができたら最高だ思うんです。だったら、多少偏差値が届きそうでなくても、チャレンジしてみる、というのはすごく意味があることだと思います。

(構成/教育エディター・江口祐子)

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安浪京子
中学受験専門カウンセラー/算数教育家 安浪京子

やすなみ・きょうこ/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。オンラインサイト「中学受験カフェ」主宰。

矢萩邦彦
中学受験塾塾長 矢萩邦彦

やはぎ・くにひこ/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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