「なぜそう考えるの?」の問いは、家庭でもできる
――考えを言語化し、発表していく場がもっと公教育に浸透していくといいですね。
迫田 自分を表現し、口にする機会は公立の中学や高校でも広がっているように感じます。近年は、「数学」の授業のなかでグループワークを行う高校もあるようです。高校レベルの数学でグループワークって、一見、効率が悪そうな気もしますが、主体的な学びにつながりますし、現場の先生方もいろいろ工夫されているな、と。
茂山 僕の塾では、「生徒同士で話してもらう時間」を大切にしています。例えば国語の選択式の問題であっても、「Aを選んだのはなぜ?」と、理由を言葉にして発表してもらっています。正解か否かはあまり関係なく、なぜそう考えたのかを口にすることが大切。話すのが苦手という生徒もいるので、皆が話せるようになるまでには一年ほどかかることもあります。でも、こうした授業を続けていくと、空気が熟成されていく。学びに厚みを持たせたい、という気持ちは常に持っています。
迫田 正直なところ、僕は中学入試の算数の試験だってすべて記述式にしてほしいと思っているくらいです。生徒たちは、「考える」ことから逃げないでほしい。これは、受験勉強に限った話ではないですね。ロジカルに物事を考えず、人の意見に乗っかり、自分の意見を言えないのは危惧すべきことだと感じるからです。
「なぜそう考えるの?」「なぜそうしたいと思ったの?」といった会話は、家庭内でもできることですよね。すべてを教育現場に求めるのではなく、まずは家でできることから始めてほしい。それが思考力を育む第一歩につながると思っています。
(聞き手/古谷ゆう子)
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