中絶を経験した子もいました。精神的、体力的、そして金銭的にも重くつらいものだろうに……そういうことを「知識がないために」体験してしまうのはいったいどうなんだろう。セックスに関わってくるいろいろな責任やリスクが教えられていないのに、その結果が中絶なんてあんまりじゃない?恥ずかしがったり隠したりせずに、もっときちんとみんなに伝えてほしい。こんなモヤモヤをずっと抱き続けていたんです。

 仕事をするようになってから、いろいろな方に「性教育の番組をやりたいです」と話してみたのですが、却下されました。今でこそ性教育への関心が高まっていますが、その当時はバラエティータレントで性教育なんて「なに言ってるの?」という感じだったのです。

「なにを」「いつ」届けるか、ものすごく悩みます

――そこで、YouTubeになったのですね。

 性教育の番組やイベントがかなわず、YouTubeに行きつきました。でも、よく考えてみると、たとえばイベントなら一度に集まれる人数に限りがありますが、動画なら毎回何万人、時には何百万人の人に届けることができます。ですから、自分がやりたいことと動画は相性がぴったりなのです。

 動画は、毎回4人くらいのメンバーで作っているのですが、正しい情報をお伝えするために、たくさんの方々にご協力をいただいています。監修の産婦人科の先生をはじめとする専門家の方々、登場してくれるゲストの方々……。皆さんには企画の段階から加わっていただくこともあります。

  たとえば「性的同意」というワードひとつみても、その意味を説明することはかんたんです。でも、自分ごととして考えたときに、どういう場面でどうとらえるかは意味を知っているだけではピンときません。ですから、そこをていねいに解説しようとか。やりたいことは尽きません。

 よく「性教育は人権教育だ」と言われます。性教育をするかしないかは、人によってさまざまな事情や考え、価値観によって異なると思います。でも、たとえば妊娠のしくみや避妊の方法、予期しなかった妊娠への対処など「絶対的に必要な情報」を教えないというのは、人権を無視した、その人にとって大事なツールを奪うことになると思っています。ですから、そこを教えないことには怒りを感じます。

NEXT「あたり前」が浸透するように
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