英語教育の低年齢化が加速する今、子どもの英語学習にどう関わればいいのか悩む親が増えています。英語教育の成功のカギはなにか。親ができることとは――。『斉藤先生! 小学生からの英語教育、親は一体何をすればよいですか?』(アルク刊)からお届けします。

MENU 「英語読み」と「ローマ字読み」で混乱する子どもが続出 ローマ字表記には統一ルールがない Inoueさんの英語読みは「イヌーさん」  英語を「ローマ字読み」するのは危険行為

「英語読み」と「ローマ字読み」で混乱する子どもが続出

 日本の小学校では3年生でローマ字を教わります。英語を教える身としてローマ字は最大の敵。フォニックスできれいな発音を習得した子どもが、ローマ字の授業がはじまったとたんに一度崩れるということが私たちの塾でも毎年起きます。

 私たちの塾ではそこから必死にリハビリに努めますが、小学校で英語の指導をしている先生たちの話を聞くと、混乱しっぱなしの子どもも一定数いるそうです。それはそうだと思います。

 キーボード入力のためにローマ字を教える需要があることは理解できます。しかし、明らかに英語教育と正面衝突している、そして実際に被害者が続出している事実を文科省は深く受け止める必要があります。

 小学校で英語活動を導入したのであれば、英語の複雑な音と文字を連結させることを優先し、ローマ字教育は学習指導要領から外せば良いというのが私の長年の主張です。

 仮に教えるとしたら、ローマ字と英語の関係について適切に区別して説明したほうが良いでしょう。誰も使わない訓令式を押し付けるのではなく、ヘボン式と、英語との微妙なズレについて、適切な導入と説明が必要だと言えます。タイピングに関してはカナ文字入力でも対応できるでしょう。「ローマ字が使えないと困らないか?」という意見もあるかもしれませんが、実際、小学生がローマ字を読んだり書いたりできないことで困る場面はどれだけあるのでしょうか?

 そもそもローマ字は、アルファベットを母語として使う人が日本語の文字を一切使わずに日本語の音を真似するために考案されたものです。日本語の文章は翻訳すればいいわけですが、固有名詞などは翻訳できません。そのときに使うのがローマ字です。ですからローマ字が実際に使われる場面のほとんどが人名や地名などの固有名詞で、それ以外はsushi、wagyu、kawaiiなど日本語がそのまま英語化された特殊なものにすぎません。

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斉藤 淳
J PREP代表 斉藤 淳

J PREP代表。元イェール大学助教授。上智大学外国語学部英語学科卒業、イェール大学大学院政治学専攻博士課程修了。2012年に J PREP 斉藤塾を起業。著書に『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社)、『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』(KADOKAWA)、『アメリカの大学生が学んでいる本物の教養』(SBクリエイティブ)などがある。

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