ただ不登校に関しては多様な学びを提供する場は少しずつ増えてきています。小中学校で不登校を経験した子たちが通いやすいカリキュラムを作っている学校もありますし、オンラインを中心に自分に合った授業を受けられる学校もあります。今後もある程度選択肢が広がれば、それぞれに合った学びを受けることはできるかと思います。 

ギフテッドは「脳の個性」と考えて

 ひとつ言えるのは、ギフテッドを含め、発達障害はいわば「脳の個性」であるということ。決して「治すべきものではない」ということを、周囲の大人は理解してほしいですね。本人の基本的な特性はずっと変わりません。大人になるまでに、その特性や個性と、どう折り合いをつけてうまく付き合っていけるようになるかが大切なのです。ご家族だけでなく、医師、学校の先生たちと一緒に、彼らの才能をどう伸ばし、周囲と折り合いをつけていけるのか、その道を総合的に考えていくのが大切なのではないでしょうか。

――ギフテッドとして社会に出て活躍している人もたくさんいるわけですからね。

 前編で触れた台湾のオードリー・タンさんは、典型的なギフテッドですが、子ども時代は常にいじめられ学校を転々として結局どこの学校にも合う場所が見つからなかったといいます。本人が自分で努力し、今のように、才能を生かす仕事に就くことができました。

 日本においても同様で、小学生くらいだとなかなか将来像がつかめなかったとしても、元々知的能力も高いですし、大人になるにつれて自分がどう振る舞うのがいいか、自身の能力をどう生かせばいいかがわかってくるはずです。これまで多くの患者さんを見てきましたが、大学生にもなると、多少個性が強くても周りも受け入れてくれますし、本人も家族や周囲の意見を素直に聞けるようになってきて、社会性を発揮できる人も多いと感じます。将来、大学や大学院に進んだのち、一般企業に就職し、得意な分野で活躍されている方もたくさんいますよ。 

 大切なのは当事者本人の気持ちです。本人が変わりたいという気持ちがあるかどうか、新しい環境に行きたいと思うかどうかが大切です。わが子の個性をよく見極めて、無理強いはせず、長期的な視点で、少しでもその子に合った環境や新しい居場所を探してあげてください。

(取材・文/玉居子泰子)

※前編<「ギフテッド」とは何なのか? 発達障害との関連は? 専門医に聞く>から続く

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玉居子泰子
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