たくさんの習い事をやったからといって体験がその分だけ膨らむかというと、そうでもないようです。もしかしたら、ひとつひとつを味わい損ねていないでしょうか? たくさんやりたがる子は、刺激に走って体験を味わったり、咀嚼(そしゃく)して身につけて応用したりすることができていない、という可能性もあります。まずは習い事でやったことを掘り起こす喜びを一緒に味わってみましょう。親御さんのできる範囲でいいので、「今日習ったこと、10分ぐらいパパと一緒にやろうよ」と味わう楽しみを教えてあげる。そして、「一つひとつの習い事をじっくり味わいたいけれど時間が足りない」となったら、優先順位を決めて「今はこっちを優先しよう」と、数を絞っていけると思います。
ただ、なかには楽しみが減る気がしてやめたがらない子もいるかもしれません。あるいはたくさんやることを自分の武器のように感じているかもしれない。そういった子は一つ減らすと自分がパワーダウンした気になったりするので、既に習得しているものがあり、お子さん自身が豊かになっていることを伝えて安心させてあげるのも一つです。そこでの会話は「習い事でやったからできるんだね」というスキルの視点ではなく「あなたができている姿ってかっこいいね」と、お子さん自身の話し方をしましょう。
――親はつい「できるようになったね」「ここまでいったね」という言い方をしてしまいがちです。
そのほうが成果をアピールしやすいですからね。誰も頼んでいないのに競争したり、勝手に喜んだりしてしまう(笑)。それは大人側の「子どもにこうなってほしい」という勝手な欲求と言えるかもしれません。
「体験重視」の弊害
――小川さんは、習い事事情で危惧していることがあるそうですね。
今、大学入試で「総合型選抜」(※旧AO入試。大学への適性、学習意欲や学ぶ力、目的意識などを多角的に評価する入試)が増えています。それ自体はいいことだと思いますが、一部の地域では習い事や課外活動、ボランティアなど体験のラインアップをまるでカードバトルのようにいろいろ揃えようとする人が出てきています。
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