子ども自身の今の価値観も認めてあげて

安浪:そうですね。そしてまずは、子ども自身の今の価値観も認めてあげたほうがいいと思います。先日、6年生の子が志望校をバーッと上げてきたので、「どうしてそこに行きたいの?」と聞いたら、「とにかくいい大学に入りたいから」って言ってきたんです。今どきなかなかないストレートな理由だな、と思ったんですが、その子に対して、「世の中いい大学が全てじゃないよ」と言っても刺さらないじゃないですか。ですから、「わかった。そのために頑張ろうね」と言いました。大人だって正論を言われても「言っていることはわかるけれどなかなか受け入れられない」という時もありますよね。

矢萩:僕は子どもたちに「成績があんまり良くないいいヤツと、偏差値がすごく高いけれど嫌なヤツ、どっちと友達になりたい?」というような質問を投げかけるところからスタートしたりします。つまり、判断の基準は自分にとっていいヤツか嫌なヤツかで、偏差値って関係ないよね、と。同じように、受験に失敗してしまったけれど努力家でいいヤツがいたとしましょう。一方で受験に失敗したことがなくて挫折知らずの嫌なヤツがいたとしましょう。これはどう? と。もちろん受験にうまくいっていていいヤツがいればそれは理想的かもしれないし、あなたがそれを目指すのはいい。だけど「塞翁が馬」っていうこともあるし、同じ人間だって価値観も変化します。だから、今自分が何を大事に思っているのかを、その都度ちゃんと確認したほうがいいよと。そのうえで、自分が置かれた状況でどう行動すべきかを考えればいいから、まずは基準をちゃんと持っておこうということを子どもたちに伝えています。

矢萩邦彦さん

安浪:それは子どもにとっても、すごくわかりやすい問いかけですね。

矢萩:でもこれは1回言ったら刺さる話ではないんです。小学生のうちは折々にそういう話をして「お父さんやお母さんはこう思うけど、あなたはどう思う?」みたいな対話を繰り返すなかで、少しずつ腑に落ちる部分が出てきたりすると思います。たとえ反抗されても親はブレちゃダメなんです。反抗期の時って、たとえ反抗していても、ちゃんと親の言葉を聞いていますから。親に対するリアクションは本心じゃない場合も多い。だから子どものことを信じてあげたほうがいいです。今反抗していて、聞いてないような顔をしているけれど、きっと聞いてくれていると信じて伝え続ける。下手に不安に思わないほうがいいと思います。

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