抽象的な概念を学ぶ算数だからこそ、苦手な子の「わからない」の奥にあるつまずきの具体的な原因を知ることが大切。親はどう寄り添ったらいいのでしょうか。子どもの学習のつまずきの原因を認知科学の観点から研究している今井むつみ先生に聞きました。子育て情報誌「AERA with Kids2025年夏号」(朝日新聞出版)からお届けします。

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計算ができることより 計算の意味が大事
算数のつまずき3大要因

計算ができることより 計算の意味が大事

 やや乱暴な言い方ですが、足し算、引き算、かけ算、わり算といった四則演算は「計算のやり方さえ覚えて機械的に作業すればできる」ようになるでしょう。

 ただ算数が苦手な子は、計算はできても、足し算や引き算、かけ算、わり算そのものの「意味」や、それぞれの「関係性」を理解できていないことがつまずきの原因になっている場合が多いのです。

「例えばかけ算が足し算・引き算・わり算とどういう関係にあり、どう違うのかを理解できなければ使いこなすことはできないですよね」と今井先生。

 それが顕著に出るのが文章題。苦手意識も高く、どんな式を立てたらいいのかわからなくなってしまう子どもも少なくありません。文章全体を読まずに、問題に出てきた数字を、自分に都合のよい考え方や「たぶんこんな感じだろう」といった感覚で、「適当に」四則演算に当てはめてしまうことも。これもつまずきの原因の一つです。

 また、抽象的な言葉に思考が止まってしまうことも。「比べる」「あふれる」など、全ての言葉が生活に出てくるとは限らず、子どもにとって「知らない言葉」が問題文に出てくると、どうしたらいいかわからなくなってしまいます。

「算数に関する言葉はふだんの親子の会話で身につけるのは難しい。会話では『等しい』より『同じ』を使いますよね。一番の対策はやはり読書。小学生時代は子どもに任せがちな読書ですが、次ページのサポートを参考に言葉力をぜひ高めてほしいと思います」

算数のつまずき3大要因

 苦手な単元の「内容を理解できていない」ことだけがつまずきの原因ではありません。「こういうものだ」という思い込みや言葉の力不足だったりもするのです。

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船木麻里
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