まずは「合格するように頑張ろう」と声を掛ける
安浪:今とくに東海地方はすごく中学受験熱が上がってきて、関東や関西の塾もどんどん名古屋あたりに進出してきているんですね。東海地方の中学受験は、塾や塾の先生が中学受験原理主義なところも多いです。医学部志向も強いですし。ご家庭や子どもはそうは思ってなくても、塾で「あなたたちは選ばれし戦士だ、この学校を目指して頑張れ」みたいなことをすり込んでくる場合もある。ですから本人の中でもパパとママの言うことがわかるけれど、どうなんだろう、って迷う気持ちが出てきてしまうこともあるのかもしれません。
矢萩:やっぱり対話を続けていくしかないと思います。親の価値観はいつわかってもらえるかはわからないですし、意味を理解することと、心から納得することとはズレがあります。でも、子どもが大人になっていく過程で、すっとわかる瞬間が来ることがあるので、今無理やり親の価値観を押し付ける必要はないと思います。ただ対話をしていくなかで、受験というのは選択肢の一つに過ぎないんだよ、とか、私立に行けば幸せになるわけじゃないよね、ということをちゃんと話して、対話を続けていくことが大事だと思います。
安浪:ご質問者さんの、先生方ならどんな声掛けしますか、という質問に答えるとすると……。まずは「何が何でも合格するように頑張ろう」と言うかなって思います。もちろんそのなかでも「私立が全てじゃないよ」ということは折を見て言ってはいきますが。東京でも「中学受験したのに地元の公立に進学したら落ちたって思われるから嫌だ」って言っている子はたくさんいます。とはいえ、全員が同じ中学に行くわけではないですから、地方とはちょっと状況が違います。
矢萩:僕も安浪さんがおっしゃるように「今そう思うなら頑張れ」という声掛けでいいと思います。ただ、「それだけが全てじゃない、そうじゃない選択もたくさんあるよ」ってことは言い続けてほしいと思います。子どもは聞いていないようでいて、あのとき親はそう言っていたな、みたいなことは絶対どこかに引っかかって覚えているんですよ。自分の意見や、周囲の意見と違うならなおさらです。
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