小嶋さんによれば、団員の出身上位校は20年前、30年前とそれほど変わらない、という。
「出身校ランキング上位にはミッション系女子校が並んでいますが、その多くはお母さんが宝塚のファンというケースです。また、音楽、演劇などの課外活動が盛んな学校には宝塚を夢見る生徒が多いです」
宝塚から人気スターが現れたとき、その出身校から後輩が受験する傾向も見られるようだ。
「星組娘役で人気があった、はいだしょうこさんは国立音楽大附属高校出身です。ここからの受験生が増えたことがありました」
高校を退学してタカラジェンヌを目指す場合も
昨今、公立高校出身者も多く見られるようになった。音楽、演劇など芸術に特化したコースで学んだ生徒だという。兵庫県立宝塚北高校演劇科、大阪府立夕陽丘高校音楽科、東京都立総合芸術高校舞台表現科(演劇専攻、舞踊専攻、クラシックバレエコース、コンテンポラリーダンスコース)、愛知県立明和高校音楽科などだ。
宝塚音楽学校への応募資格は「2004年4月2日 ~ 2008年4月1日までに生まれ、受験時に中学卒業あるいは高等学校卒業又は高等学校在学中の方。(通信制高等学校在学中で年間所定単位修得見込者は含みます。但し専修学校、各種学校は含みません。)」とある(2023年度受験)。
中学を卒業するときと、高校時代の3回、最大で4回、受験の機会がある。
高校在学中の受験にあたっては、在籍する学校で生徒への対応に差があるようだ。小嶋さんが説明する。
「寛容、厳格に分かれます。前もって受験するといって合格し、退学する生徒をあたたかく送り出す学校があります。ウェルカムな感じです。一方で、合格して退学を申し出て謝りにいってもひどく怒られ、生徒が泣いてしまう学校もあります。これは古くからの伝統校で校則が厳しい学校に見られます」
合格して学校を退学することについて、「ひどく怒られ」てしまうのはどのような理由からか。最近、宝塚音楽学校に合格者を出した学校の関係者がこう話してくれた。
「退学は、学校にすれば良くないイメージを抱かれてしまう。宝塚の予備校のように受け止められるのは学校として本意ではありません。また、高校1、2年の終わりに学校をやめられてしまうと、新年度のクラス編成が決まった段階なので、もう一度、クラスを作り直さなければならない。いい迷惑です。学校が怒るのも無理ないでしょう」
タカラジェンヌを夢見る人は、怒られたところでへこたれはしない。
宝塚音楽学校の応募資格にこんな一文がある。
「容姿端麗で、卒業後宝塚歌劇団生徒として舞台人に適する方」
多様性の尊重が求められる今日にあって、人材の募集で「容姿端麗」を掲げるところは宝塚以外ではあまり聞かない。時代に合わない表現であることは重々承知だろうが、それは宝塚が長年培った誇りの一つなのか。そんな誇り高き世界に、自分に自信がある、自己評価が高い、創造性に富んでいる、素直で何でも吸収できる――などを兼ね備えたタカラジェンヌ予備軍が集まってくる。こうした人材を多く育てる学校が、宝塚に近いと言えるかもしれない。
(教育ジャーナリスト・小林哲夫)