矢萩:ちょっと話がそれるかもしれませんが、僕はキャリア支援もやっているんですね。それで最近感じるのが、いわゆる優秀な大学を出た学生でも進路に迷っているケースが目立つんです。つまり、中学受験して進学校に入って、難関大学に入った学生が、就職活動でうまくいかなくて、自分自身でもどうしたらいいかわからなくなって悩んでいるんです。ある学生は、就職活動を進めていくなかで、「自分の中に軸がないことに気づいた」と言っていました。その学生と対話するなかで分かったことは、やはり今まで親や先生からやれと言われたことをやってきた人生だった、つまり主体的に生きていなかったということなんです。

安浪:まさに最近よく見るケースです。幼少期とか小学校のときって、まわりの子より勉強ができる子がもてはやされますよね。そういう子は受験でも最難関校に受かったりしますが、社会に出ると、勉強がすごく得意というだけでは通用しなくなります。先ほどの矢萩さんの例もそうですが、たとえ周囲から羨ましがられる会社に就職できても、モチベーションを見出せなかったり成果が出せなかったりして悩んでしまうケースもあります。小さい時ほど、点数とか偏差値が高い学校というような判断基準で「すごい」と思われがちですが、大きくなればなるほど本当に関係なくなるな、ということを痛感します。

■受験の基礎と、人生の基礎は当然違う

矢萩:受験の基礎と人生の基礎は当然違うわけですよね。昔は人生の基礎とか社会人としての基礎力みたいなものは、勉強を含めた受験という経験のなかで培われるものと重なっている部分も多かったんです。ところが最近はそれが乖離していることが問題になっているように思います。これやって何になるの?人生でどう役に立つの?それはAIができるよね、という内容、つまり知識量とかスピードとか正確さを鍛えることが受験勉強では変わらず求められている傾向があります。そうはいっても入試に受かることが目的ならそこを鍛えていかなければならないんですが、もしご相談者さんのようにあまり偏差値を気にしない受験ができるのであれば、いっそ人生で役に立つような学びを主体的にやっていくのがいいのではないかと思います。

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