■身体的な感覚と知識が結びつかない子も多い

矢萩:今、食塩水のお話がありましたけど、身体的な感覚と知識が結びついていかない子は最近多いですね。ですからうちの塾では中学受験を探究的に学ぼうよ、と言っているんですが、そういう発想に転換すると、受験では即得点力につながるかどうかわからないけれども、人生に役立つところだけ拾って積み上げていくっていうことはいくらでもできるはずなんですよね。

安浪:はい。そして算数で得られるものというのは図式化する力だと思いますね。たとえば、食塩の問題は文章を読んでいるだけじゃわからないけれど面積図にしてみると分かりやすくなるよね、とか。やはりどんなにA Iが発達しても人間がさまざまな型を使って手を動かして問題を解決する力は必要じゃないですか。算数はいくら解き方を丸暗記しても、実際には自分の手を動かさないと解けないから、そういうトレーニングに向いている科目だと思いますね。

矢萩:理科も社会も本当は手を動かすべきなんですよ。理科だったら中学受験のコンテンツをちゃんと実験したり観察しながら進めていくことは可能なんです。結局それをしないのは、大手塾でやるにはコスパが悪すぎるのと、あとはやるべき範囲が多すぎるので、座学にしないと間に合わない、ということがあります。でも、これって0か1かではなく、やれることはある。以前、大手進学塾で教えていた時、ちょうどその校舎の裏に川があったんですよ。理科にも社会にもつながることなので、教室にいる子全員連れて川を観察しに行きたいと提案したら、教室長と大揉めになったことがありました(笑)。

安浪:逆に勉強がそれなりにできて、高偏差値を目指します、ってなってしまうと、もう塾の演習を解くだけでいっぱいいっぱいになってしまいがち。ですが、偏差値にあまりこだわらず学校を選べるのであれば、今話してきたような本質的な学びを上げていこう、という方向にシフトすることはできますよね。

NEXT「詰め込み」といわれる勉強とは
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