矢萩:そうです。これからは現実にあることを身体的に理解する学びがすごく大事になるのですが、そこが抜け落ちちゃっているのがいわゆる詰め込みといわれている勉強です。とはいえ、実験にも、できるものとできないものがあります。できることはやればいいし、できないことはいったん座学で入れておけばいい。さっきの食塩水の問題だったら本当に作ってみて舐めてみるとか、煮詰まったらどんな味になるかは、味噌汁でだってできます。

安浪: 20年ぐらい前に教えていた頃の生徒たちは家のお手伝いもしていたし、今ほどデジタルデバイス漬けじゃないから、お鍋が煮詰まったら味が濃くなるってことは当たり前にわかっていたと思うんです。最近の子はあまりに日常生活が去勢されちゃっているのでその身体感覚が薄れてきていますよね。よく立体図形が得意な子は男の子という説がありますけれど、それは女の子より男の子のほうが小さい時からボール投げなどをして遊んでいるから、空間認識能力が高まるからだと言われています。たとえば、お兄ちゃんや弟と小さい頃から一緒に遊んでいる女の子は立体図形が得意になったりします。小さい頃に体を動かしていろいろやってみたことが、学年が上がるにつれて学問と結びつくのが一番強いですね。

(構成/教育エディター・江口祐子)

○安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。著書に、佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)、『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)など。

○矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『自分で考える力を鍛える 正解のない教室』(朝日新聞出版)、『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)など。

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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