■公立初の小中高一貫校新設も私立小に影響

 さらに、東京西部の多摩地区の家庭にとってインパクトがあったのは、「公立初の小中高一貫校」として話題を呼んだ都立立川国際中等教育学校の附属小学校の誕生だ。

 小1から週4コマの英語に加え、第二外国語も学ぶなど、「国際社会」を視野に入れたカリキュラムが注目され、初年度の志願倍率は30・98倍という高倍率に。結果として、早稲田実業学校初等部(国分寺市)や桐朋学園小学校(国立市)、国立学園小学校(同)、立教女学院小学校(杉並区)など、周辺地域の私立小も志願者が増えた。

 吉岡さんは、立川国際の新設について「開校を機に、教育熱心でもこれまで小学校受験に興味のなかった潜在的な層を掘り起こした」とみる。ホームページ上に適性検査の例題や出題方針まで公表するといった姿勢も、今後の私立小の情報公開に影響を与えそうだ。

【図B】首都圏の私立小学校志願者倍率(『英語に強くなる小学校選び2023』より)。同率で順位が異なるのは小数点以下第2位を四捨五入しているため
【図B】首都圏の私立小学校志願者倍率(『英語に強くなる小学校選び2023』より)。同率で順位が異なるのは小数点以下第2位を四捨五入しているため

■高偏差値中高への接続や中学受験前提のニーズも

 次に首都圏の志願者倍率ランキング(図B)を見てみよう。上位に並ぶ有名校の顔ぶれは変わらないが、歴史とブランド力を誇る私立小のなかで、毎年上位をキープしているのが、2019年に東京・世田谷区に開校した東京農業大学稲花小学校だ。生き物、環境など農大の専門的な設備を活用したカリキュラムと食育を意識した給食、充実したアフタースクールなど共働き家庭の支持を集める要素に加え、人気の背景には「世田谷という私立小のニーズが高い立地」(吉岡さん)にもある。

 また、野倉さんは「過熱する中学受験を避ける手段として、小学校受験を選択する家庭も増えています」と指摘。一貫校であれば、中高の偏差値が高い小学校に人気が集まる傾向があるという。東京農業大学稲花小も例にもれない。

 ランキング11位の晃華学園小学校では、男子の場合、姉妹校である暁星中学校へ推薦入学できる制度もあり、やはり「中学受験を避けたい」層に、一定の需要がありそうだ。

 一貫校というスタイルにこだわらず、「中学受験に強い」小学校を選択する家庭もある。開成・麻布などの御三家をはじめ難関中学への進学実績が群を抜く洗足学園小学校がその代表例といえる。

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