■自分が小学1年生のころを思い出してほしい

矢萩:ご自身が小学校1年生のときどうだったか、思い出してほしいです。「塾に通うのが疲れた」と言っているのも、目標や現状に対して「このままでいいのだろうか」と自己言及できるようになったからかもしれない。理性的に考えられるようになってきたからこその葛藤だと感じるので、もし夢や目標が違ってきたのなら、これからやりたいことを探すためにいろいろ勉強してみたら?とか、何か新しい夢が見つかったときに、その夢が叶いやすくなるかもしれないから勉強を続けてみたら?といった話をすれば、ちゃんと通じると思います。

安浪:そうです。そもそも娘さんがなぜ医者になりたい、って言い出したのかわかりませんが、幼稚園や小学生の時に持つ夢って、たまたま近くにいた人の影響だったり、テレビやマンガの影響だったり、親の刷り込みだったりするわけじゃないですか。その夢をずっと持ち続けなければいけないなんておかしな話です。

矢萩:僕は自分が幼稚園児のころ、「科学者になりたい」と言っていたんですね。昆虫や生き物が好きだから生物学者になりたいと。で、小学生になってからは、「悪いヤツ」が嫌いだけれど身体的な実力行使は嫌だったので「弁護士になりたい」と言い始めたんです。そこで母親のスイッチが入っちゃって、中学受験をすることになったんですが(笑)。ずっと言われ続けましたよ、「あなた、弁護士になりたいって言ってたよね?」って。それがすごいプレッシャーで。

安浪:わかります(笑)。

矢萩:中学に入ってバンド活動はじめたときも、「話が違う、考え直せ」とさんざん言われました。確かに自分から「弁護士になりたい」と言ったのは事実だし、「僕が悪かったのかな?」ってどこかでずっと思っていたんですよね。冷静になって考えるとなんにも悪くないんだけど、何か無駄な罪悪感を抱いてしまったというか。だから、娘さんがそう思わないようにしてあげてほしいな。

安浪:そうそう。親ってつい「あなたが言い始めたんだよね?」とか「1回言ったことを曲げるなんて人間としてどうなの?」とか正論で子どもを責めがちなんですけど、自分はどうだったか考えてみましょう、ってことです。

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