■目標に向けての勉強は義務になる
矢萩:僕自身、小学生の頃は、弁護士が悪いことをした人の弁護もしなきゃいけないなんて思っていなかったわけで(笑)。子どもの夢なんて単純なんですよ。今まで何がなんでも医者になりたいと言っていた、と書かれていますが、それだけ意志が固かった、というより他に情報がなかった、ということもありますし。
安浪:もっと現実的なことを言うと、4年生の成績ってまだ本当に分かりませんから。「うちの子は小さい時から医学部に入って医者になりたいって言っていて、それに向かって勉強を頑張ってきた」ということが称号になってしまって、親がそれを手放せないでいるような気がします。これからどのように娘に接していけばいいですか、と聞かれていますが、4年生で一番大事なことはまず「勉強が楽しい」と思えることです。何かの目標に向けての勉強になると、義務になってしまうので、まずは勉強が楽しい、と思えるように取り組み方自体をシフトしていく必要があると思います。
矢萩:僕もそう思います。それは子どもがどんな夢を持っていようと同じです。子どもの夢が変わったら子どもへの接し方が変わる、なんておかしいですしね。
安浪:あと「最近はダラダラ勉強をやめ、かなり短くなっているので、負担は少ないはずです」と書かれていますが、勉強って密度が大事なので、時間が長いと負担が大きくて短いと負担が少ない、というものでもないんです。そのあたりの固定概念も取り払ったほうがいいですね。
矢萩:とにかく、親の夢や理想を子どもに投影しないほうがいいです。それをやるとどちらも幸せにならないですから。それに、子どもは親よりも同じ時間での成長度合いが大きいから、その分、変化も大きいんです。その事実をちゃんと認識してほしいですね。
安浪:低学年の親御さんほどこのような悩みを持つ方は多いですね。低学年のうちは親の言うことをよく聞くので。もしかしたらこのお母様は、今回の矢萩さんと私の回答を読んでも全然納得できないかもしれない。それは、自分のほしい答えではないから。この方がほしい答えは、あくまで娘が医者になる夢を取り戻すことであり、以前のように頑張るようになるにはどうしたらいいかっていうことなのかもしれません。
矢萩:納得がいかないなら、そんなご自分自身と向き合ってほしいですね。そうやって一緒に成長していくしかないんだと思います。
安浪:特に女の子は高学年になると成長して色々な部分が変わってきますし、それにつれて親子の関係性も変わってきますので、その時に我々の話をチラリと思い出して頂けると嬉しいな、と思います。
(構成/教育エディター・江口祐子)
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