統計開始以来、最も早い梅雨入りとなった大阪。5月20日の夜から翌朝にかけての豪雨で寝屋川が増水。周辺の住宅よりも水位が上がった/5月21日、大阪府大東市(c)朝日新聞社
統計開始以来、最も早い梅雨入りとなった大阪。5月20日の夜から翌朝にかけての豪雨で寝屋川が増水。周辺の住宅よりも水位が上がった/5月21日、大阪府大東市(c)朝日新聞社

 梅雨に入った地域が多く、「水害」が気になるシーズンに突入した。「ウチは大丈夫」という根拠のない安心感は、リスクになる。 AERA 2021年6月7日号では地震と豪雨について特集。「マンションの高層階も要注意」と専門家が指摘する理由とは――。

【東京23区の床上浸水は東側より西側に多い? 水害地図はこちら】

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 記録的な早さで、「梅雨入り」が各地で宣言されている。近畿、四国地方は1951年の統計開始以来最も早く、中国、東海地方なども過去2番目に早い梅雨入りとなった。では、そのぶん梅雨が早く明けるかといえば、気象庁によると全国的に長雨になる可能性があるという。

 そうなると心配なのが、「水害」だ。2011年から18年までの8年間で、東京都内で発生した「床上浸水」の棟数と面積を、都が集計しているデータを基に調べたものだ。

 東京23区は、海面水位よりも低い「海抜ゼロメートル地帯」が広がる東京東部の「江東5区(墨田区・江東区・足立区・葛飾区・江戸川区)」で大規模水害リスクが高いことで知られている。確かに浸水被害の面積では江戸川区が大きいが、これは14年9月の集中豪雨が影響していて、頻繁に起きているわけではない。また、浸水棟数を見ていくと江東区は13棟、墨田区は6棟、足立区は1棟などと決して被害が多いとはいえない。対して東京西部は杉並区316棟、目黒区251棟で、世田谷区では196棟と、東部と比べ圧倒的に多い。なぜか。

「逆流浸水」で室内浸水

「都市のヒートアイランド現象によってゲリラ豪雨と呼ばれるような局所的な大雨が東京西部で増え、排水能力が追いつかなくなり『逆流浸水』が起きているのが主な要因だと思います」

 と指摘するのは、防災・危機管理アドバイザーで「防災システム研究所」(東京)の山村武彦所長だ。

 降った雨は通常、下水道の排水路などを通して排水されるが、排水能力は設計上1時間に50ミリ。しかし今、1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降ることも珍しくなくなった。

 排水できなかった雨水は、下水などからあふれ内水氾濫を起こす。すると1階にある風呂場や浴槽、トイレ、洗濯機の排水口などから泥水が逆流する「逆流浸水」が発生し、室内が浸水することになりかねないという。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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