2019年10月中旬、過去最強クラスで上陸した台風19号。神奈川県川崎市などではマンションの浸水被害が相次いだ/19年10月13日、川崎市高津区(c)朝日新聞社
2019年10月中旬、過去最強クラスで上陸した台風19号。神奈川県川崎市などではマンションの浸水被害が相次いだ/19年10月13日、川崎市高津区(c)朝日新聞社

 総合防災コンサルタント事業を行う「防災クリエイティブマネージメント」(大阪府大阪狭山市)防災アドバイザーの岡本裕紀子さんは、高層マンションにおける水害は、特に停電によるエレベーターの停止に備えてほしいという。

「コロナ禍ということもあり、在宅避難や共有部分での避難が多くなると想定されます。その時に備え、物資や食料などの備蓄品は特定の1室に集中保管するのではなく、数フロア単位で一つの小コミュニティーを形成し、それぞれで保管します。そうすれば、1階から高層階まで、全フロアの住人が備蓄品を受け取りやすくなります。小コミュニティーをつくっておけば、災害時の情報収集にも有効です」

ベランダ浸水にも注意

 岡本さんは、高層マンションで大切なのは「自助」と「共助」だと説く。

「各家庭では日常的に備蓄をして防災力を高める。一方で、マンションの住民同士でオンライン会議システムなどを活用しながら、『今だからこそできる防災対策』を相談しマンション全体で顔の見える関係づくりを推進する。マンション住民同士のつながりは『密』であってこそ、防災力向上の礎となります」

 高層マンションだけでなく、ベランダやバルコニーがある家やマンションも注意が必要だ。短時間に大雨が降った場合、排水口がつまっていると雨水が溜まり、窓の隙間から室内に入ることもある。台風で強風が吹けば、ベランダの植木鉢やプランターなどが飛ばされ、よその家のガラスを破る「凶器」にもなりかねない。前出の山村所長は言う。

「ベランダやバルコニーの排水口の清掃や片づけは、台風対策としても重要です」

 本格的な雨の季節を前に今一度、大雨や地震に備えたい。(編集部・野村昌二)

※AERA 2021年6月7日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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