イラスト・小迎裕美子
イラスト・小迎裕美子

 歩いてみてわかったのは、梨泰院は坂が多い街だということだ。ドラマにも坂道や階段が頻繁に登場する。それらのシーンは、個性的な店が並ぶ解放村(ヘバンチョン)でのロケが多い。

 駅から続く坂道を10分ほど上がっていくと、レンガでできた低層住宅が並ぶレトロな街並みが見えてくる。ソウル中心部にしては珍しく高い建物がほとんどないので、階段や路地のあちこちからNソウルタワーが見える。若いアーティストや外国人も多く住んでおり、古い市場や食堂に交じって、オシャレな古書店やカフェもあり、デートスポットとしても人気らしい。この日も多くのカップルが秋の日の散歩を楽しんでいた。

(写真・鈴木はな)
(写真・鈴木はな)
日本の植民地支配から解放された後、海外から戻ってきた人が多く住んだという解放村。展望台からはソウルの街が見える(写真・鈴木はな)
日本の植民地支配から解放された後、海外から戻ってきた人が多く住んだという解放村。展望台からはソウルの街が見える(写真・鈴木はな)

 息を切らしながら坂を上りきったところにある展望台にのぼると、眼下にソウルの街が広がる。そんな眺望を生かし、界隈には屋上やテラスに席を設けているカフェも多い。

ド派手「長家」実は遠い

 ロケ地の多くが梨泰院周辺に集まっているが、セロイの宿敵、長家が経営する居酒屋のロケ地となった建物は、地下鉄2号線弘大入口(ホンデイック)駅近くにある。梨泰院からは電車で20分ほどの場所だ。駅名にもなっている弘益(ホンイク)大学校(弘大)は芸術系学部が特に有名で、大学周辺にはクラブや飲食店など若者に人気の飲食店が多い。

長家が経営する居酒屋として登場する建物がある弘大も、梨泰院と並ぶ飲食店激戦区。週末には多くの人で賑わう(写真・鈴木はな)
長家が経営する居酒屋として登場する建物がある弘大も、梨泰院と並ぶ飲食店激戦区。週末には多くの人で賑わう(写真・鈴木はな)
イラスト・小迎裕美子
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イラスト・小迎裕美子
イラスト・小迎裕美子

 そのなかでもひときわケバケバしい建物が長家だ。実際に居酒屋なので、店内で食事をすることもできる。

 韓国も日本と同様、コロナの影響で厳しい状況が続いている。ソウル市では8月下旬以降、自宅以外でのマスクの着用が義務化され、10月13日以降は違反者に10万ウォン(約8900円)以下の罰金が科されることになった。またカフェやレストランなどで飲食をする場合は、アプリによる本人認証か名簿に連絡先の記入を求められるなど、ものものしい雰囲気が続いている。

 以前のように観光客が自由に行き来できる日が来るまでにはまだ時間がかかるかもしれないが、コロナ禍が過ぎたら、その時はぜひ梨泰院の街を訪ねてみてほしい。(文・鈴木はな 取材協力・金洋見)

イラスト・小迎裕美子
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※AERA 2020年10月26日号