外部の専門家による「再発防止特別チーム」が6月12日午後、記者会見を開いた。撮影/写真映像部・東川哲也
外部の専門家による「再発防止特別チーム」が6月12日午後、記者会見を開いた。撮影/写真映像部・東川哲也

 ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川氏(2019年に死去)による所属タレントへの性加害問題。これを受け、外部の専門家による「再発防止特別チーム」は12日午後、都内のホテルで記者会見を開いた。

 特別チームは、前検事総長で弁護士の林眞琴氏、精神科医の飛鳥井望氏、そして性暴力被害者支援をおこなっている臨床心理の研究者の合計3人で構成。この日は、林氏と飛鳥井氏の2人が会見した。

 特別チームの座長を務める林氏は、会見の冒頭でチームの目的についてこう述べた。

前検事総長の林眞琴氏。撮影/写真映像部・東川哲也
前検事総長の林眞琴氏。撮影/写真映像部・東川哲也

「ジャニー喜多川氏からの性被害を申告されている方々に寄り添い、直接話を伺い、ジャニーズ事務所の職員にもヒアリングを実施したい」

 性加害は、人を心身ともに深く傷つけ「魂の殺人」といわれる。

林氏は、「性犯罪は経済的・社会的地位に乗じて、立場の弱い、特に年少の子どもたちが被害に遭いやすい」として、今回のジャニーズ事務所の事案は「その範疇に入る非常に深刻な問題だ」という認識を示した。

 飛鳥井氏も、こう述べた。

臨床心理士の飛鳥井望氏。撮影/写真映像部・東川哲也
臨床心理士の飛鳥井望氏。撮影/写真映像部・東川哲也

「立場の強い者が立場を利用して弱い者に性暴力を繰り返し行う。非常に深刻な問題です」

 今後、特別チームでは「ジャニーズ事務所の過去の対応にどのような問題があったのか検証し、ガバナンス体制の問題点を把握した上で、再発防止に向けた提言をしていく」ことになる。そのために、「同事務所の幹部や周辺の関係者にも、聞き取り調査を進めていく」という。

 ただし、「セカンドレイプの恐れなどがある」ことから、「ジャニーズ事務所での性被害を網羅的に調査することは考えておらず」、被害の刑事手続きを行うことを否定した。

 一方、ジャニー喜多川氏の性加害について、同事務所や藤島ジュリー景子社長は「知らなかった」としている。

 この点について林氏は、「前提となる『事実認定』は特別チームで行える」、「事務所側が仮にその事実を認めなかったとしても、事実認定が左右されるものではなく、それを踏まえて提言をしていきたい」と話した。

「その提言を受け入れるかどうかは、事務所側の判断になると思います」(林氏)

 さらに、一部週刊誌で報じられている、喜多川氏以外の事務所関係者による性加害があったかについても、「調査するか検討する」という。

 また、これまで黙殺してきたとされるメディアへの調査については、特別チームのミッションがジャニーズ事務所への対応であり、再発防止策をどのようにしていくかであるとして、「調査の対象外」という見方を示した。現時点では、調査結果を公表する時期は「定まっておらず、中間報告の有無も決まっていない」。

(AERA編集部 野村昌二)

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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