撮影/戸嶋日菜乃
撮影/戸嶋日菜乃

「Bring it on」では、長い英詞にもチャレンジした。日本語で歌いたい内容を決め、そこに英語を当てはめていくが、日本語と英語では言葉の文字量が異なるため、歌ってみた時の歌い心地がしっくりこなかったり、リズムがはまらなかったり。「でも、そうした難しさを知ったのも、チャレンジしたからこそ」。迷った時は、10年近くオーストラリアに暮らす兄に相談したりもした。

 アルバム収録曲のなかで、最もいまの自分を表現していると思う言葉はなにか。

 そう尋ねると、「Bring it on」にある「その身に宿らせてエフィカシー」という歌詞が返ってきた。エフィカシーとは「効力」を意味する。「いま抱いている感情に名前はあるのか」と自問自答を繰り返した末、見つけた言葉だ。

■背中を押してくれる

「自己肯定感とは少し異なり、『自分はできる』と信じる力だととらえています。仕事復帰してからは、時間が空いたこともあり、不安や心配ごとが多かったんです。でも、今までやってきたのだし、戻ってくることができたのだから大丈夫だ、と。そんな自分を信じる力が、いざという時には必要だし、私だけではなく、なにかに立ち向かおうとする人の背中を押してくれる言葉だと思いました。いま、大切にしたい言葉の一つです」

 とはいえ、「何歳までにこれをしたい」など、きっちりした目標は設定していない。

「『一生、音楽をやり続けるぞ!』という気負いがあるわけでもなく、心の赴(おもむ)くまま、向かっていった先でいい形で音楽を続けられていたらいいな、と思っています」

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2023年5月29日号