スーダンの邦人退避について取材に応じる岸田文雄首相/4月25日、首相官邸
スーダンの邦人退避について取材に応じる岸田文雄首相/4月25日、首相官邸

 衆参5補選を4勝1敗で勝ち越した岸田文雄首相。見据えるのは衆院解散の時期だが、多くの落とし穴が待ち受けている。AERA 2023年5月15日号の記事を紹介する。

【図】岸田内閣の支持率はこちら

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 2021年10月の総選挙から1年半。衆参5補選を受けて、岸田文雄首相は本格的に衆院解散のタイミングをうかがい始めた。タイミングは大別して三つ。

 まず、6月21日までの通常国会中に解散に踏み切り、一気に局面転換を進める選択だ。広島サミットでは、ロシアのウクライナ侵略に対するG7の結束を確認し、覇権主義的傾向を強める中国への対抗姿勢も打ち出す。岸田首相が取り組んできた核軍縮問題では、具体的な成果は上げられないものの、長期的な核兵器廃絶の展望を示す。そうした外交成果をアピールし、政権の安定を訴えようという戦略だ。補選で見られたように野党陣営はバラバラで、総選挙でも野党の候補者が乱立すれば自民党に有利という計算も働く。

 低迷してきた内閣支持率が4月に入って上昇に転じていることも早期解散論を勢いづかせている。読売新聞が4月14~16日に実施した調査によると、岸田内閣を支持する人は47%で前月比5ポイント上昇。支持しない人は37%で、前月比6ポイント減っている。岸田首相のウクライナ電撃訪問や少子化対策に前向きな姿勢を見せていることが原因とみられる。

■早期解散に公明難色か

 一方で早期解散には難点もある。与党の公明党は、統一地方選で全国規模の選挙を戦ったばかり。支持母体の創価学会からも、総選挙に向けた態勢を組むには時間がかかるという声が出ている。岸田首相が掲げる「異次元の少子化対策」も、財源などが明確になっておらず、総選挙の公約としては説得力を欠く。森山氏が説くように、自民の選挙基盤も強くなっているとはいえないのが不安材料だ。

 第2の選択は今国会中の解散は見送り、9月までに内閣改造・自民役員人事を済ませ、臨時国会に景気対策のための補正予算案を提出。成立後の10月ごろに解散に打って出る。公明党も準備が整うし、少子化対策の中身なども明確になる。ただ、野党側も選挙態勢を進め、候補者のすみ分けが実現する可能性もある。総選挙後の年末の予算編成では防衛費増額に伴う増税や少子化対策のための社会保険料引き上げなどが想定されるため、「増税・負担増隠し解散」という批判が強まるだろう。

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