
「人口減少対策は、国民全体が利益を受け国民の幸福度を上げる政策です。消費税換算で2~3%アップで賄えるという試算があります。国民に覚悟を示すためにも、使い方を明確にし、消費税等の税で負担するべきだと考えます」(前川さん)
■誰もが生きやすい社会になれば
人が生きにくい社会なら、人は増えない。
都内の自営業の女性(47)は、社会が子育てする人に冷たいという。金銭的な援助が少ないだけでなく、ベビーカーで電車に乗ると露骨に嫌な顔をされたり、赤ちゃんが泣くと舌打ちされたりするが、そうした現場を若者が見たら子どもがほしいと思えないだろう、と感じている。
「子育てをする家族を社会で温かく支える社会、子育てする親子が自分たちはみんなから歓迎されていると自然と実感できる社会になってほしいです」(女性)
大阪公立大学教授の杉田さんは、少子化対策で求められるのは「自分らしさを妨げない社会を築くことが大切という視点」と言う。具体的には、若者を縛りつけてしまう古い性や生殖、家族、職場の規範が問題。少子化対策は、こうした「規範意識からもたらされる生きづらさを取り除く政策」と言い換えられると話す。
「例えば新婚カップルへの支援は、籍を入れていないカップル、さらには同性カップルにも行う。多様な価値観を包摂する社会を築き、誰もが生きやすい社会になれば、子どもを産み育てようという気持ちが育まれます。自分らしく生きることを妨げない社会の実現は、日本社会の閉塞(へいそく)感を取り除くことでもあります」
残された時間は少ない。今度こそ次世代を産み育てる人たちの、「希望」が叶(かな)う未来への、道筋をつけなければいけない。(編集部・野村昌二)
※AERA 2023年4月24日号より抜粋