自然に触れることが、何よりのエネルギー源。和歌山・南紀白浜のビーチではヨガプログラムも開催した(撮影/小山幸佑)
自然に触れることが、何よりのエネルギー源。和歌山・南紀白浜のビーチではヨガプログラムも開催した(撮影/小山幸佑)

 YeeY共同創業者・代表取締役、島田由香。ユニリーバ・ジャパンの人事トップとして、働く場所や時間を社員が選択できる「WAA」を牽引したリーダー。社員を信頼しないと成り立たない「WAA」の仕組みに反対意見もあったが、各人の選択と裁量を尊重し、成功に導いた。「人事は宇宙一面白い仕事」と公言していた“天職”を手放し、今、もっと人と社会を元気にしたいと日本中を飛び回る。

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「ようこそ、白浜へー!」

 2022年11月、和歌山県南岸のビーチを望むホテルのロビーに明るい声が響いた。

 この日開催されたのは、「ワーケーション」をテーマにしたシンポジウム。ワーケーションとは、ワークとバケーションを組み合わせた造語で、自然豊かな観光地で英気を養いながらリモートワークをする新しい働き方のことだ。生産性向上と地方創生の両面から注目されている。

 東京から招かれた学者やコンサルタントらと、地元企業や自治体関係者が一堂に会して「創造的な働き方」について活発な意見を交わした。前後には、周辺のコワーキングオフィスの視察や瞑想(めいそう)プログラムも。閉会後には近隣のバーを貸し切って地の野菜や鮮魚を使った料理が振る舞われた。

 東京と地方、官と民、垣根を越えて人が混ざり合い、溶け合って、新たな風景が生まれる。その渦の中心で、誰よりも楽しそうに笑っている女性がいる。冒頭の声の主、島田由香(しまだゆか・49)は半年前までユニリーバ・ジャパンの人事トップを務め、斬新な制度改革「WAA(ワー)」を牽引(けんいん)したリーダー。

「Work from Anywhere and Anytime」の頭文字を取ったこの制度は、働く場所や時間を社員が自由に選択できるというもの。「ワー」という喝采を想起させる語感もユニークだ。実現したのは2016年。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、リモートワークが一気に普及する前のことだ。他社でも応用できるノウハウとして情報提供し、現在も普及活動を続けている。

 講演に呼ばれれば、「人事は宇宙一面白い仕事」と熱っぽく語り、壮大なビジョンを打ち上げる。早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄は、島田のことを「地味で堅苦しい裏方と思われがちだった人事を変えたイノベーター」と表現した。

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