松下洸平さん直筆の連載タイトルロゴ
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松下 そうでした。あの日、まだ危険な状態の中で本番をやられている姿を観させてもらい、感動しました。そして、3回目にお会いしたのが「スリル・ミー」のポスター撮影でした。

新納 そうそう。「スリル・ミー」は二人芝居で、僕は田代万里生と、洸平は柿澤勇人と組んでのダブルキャスト。僕らが先に撮影が終わって、メイク中だった若いチームをのぞきに行った。遠巻きに見て、スタッフさんに「どっちが松下洸平ですか? 僕、会ったことがあって、お久しぶりと言わなあかんねん」と聞いたことを覚えてる。

松下 ちょっと!(笑)。2回も会ってるのに。

新納 あはは(笑)。二人の区別がつかなくて。連呼してたから名前は覚えてたけどね。

松下 (笑)。新納さんと田代さんは先輩のペアで、お二人の芝居を見て学ぶ日々でした。演出の栗山民也さんは、たいてい新納さんたちに稽古をつけて、僕らの芝居は見ずに帰ってしまう。だから早くから稽古場に入って、新納さんたちの稽古をノートに必死でメモしていました。

新納 洸平とは当時、帰り道が一緒やったこともあって、よくご飯を食べに行ったな。

松下 そうでしたね。「スリル・ミー」では、僕は「私」役、新納さんは「彼」役だったので、それぞれ相手役の立場からお互いの芝居について話せました。

新納 そうだね。あまりに話し込み過ぎて、途中から、もしかしたら洸平とのほうがペアリングが合うんじゃないかなと思ったこともある。でも、その話を周囲にしたら、僕ら二人はわりとウェットな芝居をするタイプで、一方、それぞれの相手方はドライな芝居をする。ウェットとウェットが組むと、もう見てらんないと言われた(笑)。

松下 愛憎劇ですから、新納さんと僕が組むと、泣きながらやっちゃうんじゃないかなと。

新納 うん。100分で終わらなきゃいけないところが、たぶん120分かかる(笑)。

松下 あの頃から、芝居に対する考え方や、ミュージカルの世界や演劇について、いろいろ教えていただきました。

新納 教えたというか……。愚痴ってたくらいやけど(笑)。

松下 新納さん、お酒を飲まないじゃないですか。

新納 うん、僕こう見えて飲めないからね。

松下 ご飯食べて、喫茶店で珈琲飲みながら7、8時間延々としゃべるのがいつものパターン。仕事のこともプライベートのことも何でも話してきました。

新納 それが13年続いているわけか。早いもんだね。

〇にいろ・しんや
1975年生まれ、神戸市出身。舞台、映画、ドラマまで幅広く出演。2022年NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に阿野全成役で出演。ミュージカル「バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊」(東京・日生劇場ほか)に出演中

〇まつした・こうへい
1987年生まれ、東京都出身。1stアルバム「POINT TO POINT」、写真集『体温』発売中。2023年、エランドール賞新人賞受賞。8~9月、こまつ座40周年(第2弾)第147回公演「闇に咲く花」に出演予定

(構成/編集部・古田真梨子)

※この対談の続きは下記に掲載しています。

第2回:AERA 3月6日号(2月27日発売)
第3回:AERA 3月13日号(3月6日発売)
第4回:AERA 3月20日号(3月13日発売)

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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