アラバマ州の賃貸物件に入居した初日の様子。ブラインド、照明から家電一式まで揃っているのですぐに生活を始められます(画像/筆者提供)
アラバマ州の賃貸物件に入居した初日の様子。ブラインド、照明から家電一式まで揃っているのですぐに生活を始められます(画像/筆者提供)

「引っ越し貧乏」という日本語をアメリカで説明するのは難しい。なぜならアメリカでは日本ほど引っ越しにお金がかからないからです。過去に14回──うち日本で10回、アメリカで2回、日米間2回の引っ越しを経験した個人的見解ですが、日本の引っ越し費用は高額です。アメリカで引っ越ししたとき、あまりにも安く済んだので驚いてしまいました。

 アメリカの引っ越しにあまりお金がかからない理由としては、第一に多くの物件に家電製品が備え付けてあることが挙げられます。ひとり暮らし用から家族向け、賃貸から購入物件まで、多くの家には冷蔵庫、電子レンジ、オーブン、食洗機、洗濯機、乾燥機、冷暖房(セントラルヒーティング)が付いています。寒冷地だと冷房がない代わりに暖炉があったり、南部だと逆に暖炉なしの冷房完備だったりと地域によって差はあるものの(ニューヨークなど洗濯機・乾燥機が付かない所もあると聞きます)、入居したその日からすぐ日常生活が送れるくらいの家電は揃っています。

 家電だけでなく、ブラインド、カーペット、照明もアメリカは基本的に備え付けです。日本だと引っ越しのたびにサイズを測って新しいものを買い替えなければいけません。現に日本の我が家には、今もサイズ違いのカーテンやブラインド、照明が収納部屋に眠っています。まだ使えると思うと、それにまた引っ越しするかもと考えると、どうしても処分できないのです。

 またアメリカでは、長距離・家族連れの大規模な引っ越しでも業者さんに頼まず自力で行うことが可能です。自分たちでトラックをレンタルして州をまたぐ引っ越しをした知人を何人も知っていますし、我が家(当時は夫婦と子ひとり)も、段ボール数十箱を転居先まで送り、あとは身の回りの持ち物だけ自家用車に詰め込んでワシントン州からアラバマ州まで引っ越しをしました。日本だと家電や家具を一切合切移動する必要があるから自力では難しいし、特にアパートやマンションなどは傷つけてはいけないからか「業者による引っ越ししか認めません」という物件もありますよね。

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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敷金はあっても礼金はない