企業や家計にも大きな負担になっている物価高騰。否定的にとらえられがちだが、日本経済にとってプラス面もあるという。丸紅経済研究所エコノミスト・浦野愛理さんが解説する。AERA 2023年2月20日号の記事を紹介する。

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 消費者物価の伸び率は今年1月にピークをつけ、2月以降は次第に鈍化していくと見ています。その主な要因は、電気・ガス料金への政府の補助金投入が1月に始まることです。家計や企業の支払額に反映される2月以降にその効果が表れると見込んでいます。

 輸入物価の高騰は、「資源価格」と「円安」という二つの要素に着目する必要があります。穀物や銅、原油といった商品市況の動向は、昨年2月にロシアがウクライナに侵攻した直後に急上昇した時点と比べると、今は侵攻前の水準まで落ち着いています。急速な円安も一服している状況です。

 輸入物価が消費者物価に反映されるまでにはタイムラグがあります。ガソリンや灯油は輸入物価が上がってからほぼ1カ月以内、電気代やガス代は半年程度、食料品や日用品、外食などは1年ぐらいのラグを伴う傾向があります。このため、輸入物価が昨年末にピークアウトしても企業が原材料コスト高を抱えている今年前半は、価格転嫁による物価高騰が続くと見込まれます。

 とはいえ、今年後半にかけて価格転嫁の動きは鈍るでしょう。昨年の物価の伸び率が高かった分、今年は前年比の伸び率が縮小する「ベース効果」が表れるため統計上の数値は上がりにくいことも勘案すると、伸び率は今後縮小していくと見るのが妥当だと思います。

 資源価格の一服の背景には世界経済の減速懸念がありましたが、昨年12月に中国が「ゼロコロナ」政策の緩和に踏み切ったことで、国際通貨基金(IMF)は今年の世界経済の成長率を2.9%、24年を3.1%とそれぞれ上方修正するなど、需要見通しをやや引き上げる動きも出てきています。今後のメインシナリオとしては、資源価格は大きく上がりもしないし下がりもしない、と見ています。

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