泊まり勤務も多い東京メトロでは従業員のための「仮眠室」を備えている(photo 東京メトロ提供)
泊まり勤務も多い東京メトロでは従業員のための「仮眠室」を備えている(photo 東京メトロ提供)

 睡眠時間を削って深夜まで残業することを評価する時代は過ぎ去った。睡眠の時間と質を確保する企業ほど利益率が向上するという研究もある。AERA 2023年2月13日号の記事を紹介する。

【検証データ】仕事の成果など、睡眠改善が生産性に及ぼす効果はこちら

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 眠らない街・東京の交通網を支えているのは、「従業員のよりよい眠り」だった──?

 東京メトロでは、社員の大半が交替勤務。駅員や乗務員は、泊まり勤務があり、終電まで仕事をして夜中に仮眠をとり、また朝から仕事に就く。電気設備やレール設備の保守点検などの職種の場合は、夜8時頃から仮眠をとって、電車が動いていない深夜に仕事をし、また朝5時、6時頃から仮眠をとる、ということも。

 同社が近年力を入れて取り組んでいるのが、社員の睡眠課題の解決だ。

「いつもと時間が違って寝られないとか、何かあった時に対応しないといけないから気になって眠れないなど、人によって悩みはさまざまですが、そもそも睡眠課題を抱えやすい勤務形態で、居眠りは事故の原因にもなるため、もともと睡眠への関心が高い企業風土があります。事故防止以外にもメンタルヘルス不調の予防にも取り組んでいます」(同社人事部健康支援センターの保健師・村上杏子さん)

■睡眠改善支援130社

 特にここ4年連続で取り組み、社員の睡眠改善に高い効果をあげてきたのが、ニューロスペースが提供する睡眠改善プログラムだ。

 ニューロスペースは企業向けに睡眠セミナーや睡眠改善プログラムを展開している“スリープテック”企業。CEOの小林孝徳さん自身が睡眠障害の経験を持ち、この社会課題を解決したいという思いで2013年に創業した。これまで睡眠改善を支援した企業は130社以上に上る。

 東京メトロの場合、約8週間のプログラムで、毎年150人の参加枠を設けているが、募集早々に埋まりキャンセル待ちが出るほどという人気だ。

 前半の4週間は、スマートウォッチ「フィットビット」を着用しての客観データと、寝つきがどうかなどの主観評価から、自分の睡眠の傾向を可視化する。後半の4週間は、前半に特定した課題に対して、解決のための生活習慣を定着させる期間だ。ルーティンリスト(睡眠を良くするための生活行動)を参考に、自分の生活に取り入れられそうなものにそれぞれ取り組む。

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