AERA2023年2月13日号
AERA2023年2月13日号

 自分のなかで、「どこで得点をとるか」というのは大切にしているんです。もちろん、サッカー選手なので毎試合とれればいいですけど、そう簡単にはいかない。そのなかで、どの試合にパワーをかけるか。

 例えば、「W杯で点をとる」という目標は、日課でつけているノートや、スマホに書いてきた言葉でもありました。スペイン戦の前のロッカールームでもその言葉を見直し、試合にのぞみました。

 僕は本気で、最後まで自分が点をとれると信じてやっている。それは自分の武器かなと思います。

■本を読むこと増えた

 サッカー選手は一試合一試合で、人生が変わります。嫌な世界ですけど、そのために準備を積み重ねています。ずっと「このW杯で得点をとる」というのは考えていたし、描いていたこと。W杯の初戦は緊張しましたけど、やっている最中はそんなに考えなかった。終わってみれば特別感はありますが、すぐに過去のものになるでしょうし、4年後はまたすぐ、やってきます。

――決して「感情を表に出すタイプではない」と語る。

印象的なのは、自らの立ち位置を冷静に把握していることだ。大会期間中も、移動の合間によく本を読んでいたのだという。一体、どんな本をどんな意識で読んでいるのだろうか。

田中:毎日、何時間も読んでいるわけじゃないです(笑)。でも、寝る前や時間があるときは読んでいます。

 読むのは、小説ではなく、人の考えや知識が書かれている本が多いです。最近は松下幸之助さんの『道をひらく』。あとは稲盛和夫さんの本とか……。

 読み始めたのは高校生のころです。最初は知識の本でした。自分のプレーの幅を広げたいなと思って、食事や栄養や睡眠についての本を読んでみたんです。読んでどんどん情報が入ってくる感覚が好きでした。1千円ちょっと払うだけで、人の考えていることを知れるのがいいなって。そこから本を買うことや読むことが増えましたね。

 よく、サッカー人生のターニングポイントを聞かれるのですが、そういうのはあんまりないんですよね。基本的には、読書も含めて、毎日やっていることが積み重なって成果が出るという感覚なんです。それが、日本代表に入る、代表で試合に出る、とかちょっとずつ上のステージで花開いていく。

 僕は結構、物事を長期的に考えられるタイプだと思っています。今がうまくいかなくても、1年後、2年後、うまくいくだろうなと。そんなに焦ったりすることがないんです。

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