鉄骨がむき出しのままの1号機。ここを大型カバーで覆い、中のプールにある392体の使用済み核燃料を取り出していくことになる(写真:代表撮影)
鉄骨がむき出しのままの1号機。ここを大型カバーで覆い、中のプールにある392体の使用済み核燃料を取り出していくことになる(写真:代表撮影)

 東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から、間もなく12年を迎える。今も多くの課題や難題を抱えている。福島第一原発に入った記者がリポートする。AERA 2023年2月6日号の記事を紹介する。

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 水素爆発で吹き飛んだ原子炉建屋が、鉄骨むき出しのまま今なお無残な姿を晒している。

 東京電力福島第一原発。100メートル先に、事故を起こした1~4号機の原子炉建屋を望む高台に立った。

「1号機は、2023年度ごろを目標に大型カバーの設置を完了させる予定です」

 福島第一廃炉推進カンパニーリスクコミュニケーターの高原憲一さんが説明する。1号機の建屋上部にある使用済み燃料プールには、392体の核燃料が残っている。これを取り出すのに建屋全体を大型カバーですっぽり覆い、内部でがれきなどを撤去し、27年度から取り出しを開始するという。

 未曽有の事故から間もなく12年。1月上旬、記者は取材団の一員として廃炉作業が続く福島第一原発に入った。東電は、工事は一歩ずつ進んでいるとするが、その歩みは遅く、いくつもの難題を抱えている。

 本来、1号機の燃料の取り出しは17年の計画だったが、ほぼ10年遅れとなっている。

 東電が「廃炉の本丸」と位置づける、1~3号機の原子炉に溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しに至っては、強い放射線量に阻まれ先行きが見えないままだ。1~3号機で溶け落ちたデブリの総量は推計880トン。ようやく23年度後半に取り出しに着手するというが、取り出すのは「耳かき程度」(高原さん)で、その後のことについては「まだ何も言えない」(同)。

■差し迫る海洋放出

 5号機東側の海沿いの敷地では、敷地内にたまった放射性物質のトリチウムを含む「処理水」の海洋放出のための作業が進んでいる。

 処理水をためておく水槽(立て坑)が掘られ、その側面から沖合約1キロまで海底の岩盤をくり抜きトンネルが掘られている。東電によると、海中にはトリチウムの濃度を国の排出基準の40分の1未満に薄めて放出するという。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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