今年1月からスタートした大河ドラマどうする家康」。制作統括を務める磯智明・NHKプロデューサーにドラマへの思いとともに、徳川家康の魅力を聞いた。AERA 2023年1月23日号から。

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 徳川家康には、江戸幕府をひらいた人物として神格化された部分があります。けれども、一個の人間としてみると、三河の一大名から天下人に上り詰めるまで壮大なサクセスストーリーがあり、物語としても非常におもしろい。乱世を生き抜いていくさまは、わくわくもするし、閉塞感のある現代でも共感できる部分もある。そこで、単独主役では1983年の滝田栄さん主演の「徳川家康」以来、40年ぶりに大河ドラマで描くことにしました。

 はじめ、家康には力がありません。周囲の力を借りなければ生きていけず、どう人と結びついていくかが序盤のテーマです。

 生き残るためには戦をしなければいけない、戦を続けた先に出口はあるのか。今川義元のように徳によって治めるか、信長のように力をもって治めるか。葛藤しながら、多くの「どうする」を突き付けられていくさまを、脚本家の古沢(こさわ)良太さんが、ユーモアも交えて描きます。

 私自身は、家康の「リカバリー力」に魅力を感じます。家康の戦での勝率は織田信長や武田信玄の7割超えに比べ、5割5分程度。その勝率で天下人になれたのは、敗北の体験や経験から何かを学んでいたからだと思いませんか。家康に質問できるとしたら、人生のターニングポイントを聞いてみたいですね。

 家康は家臣のチーム力に支えられており、現代で言うなら、人と状況をシェアし、最適な方法を考え出していくタイプのリーダーでした。だからこそ、260年あまり続くシステムを作り上げることができたのだと思います。

AERA 2023年1月23日号