AERA 2022年12月19日号より
AERA 2022年12月19日号より

■三笘は後半19分から

「置きにいく」とは、よく野球の投手がカウントを悪くし、「腕を強く振らず確実にストライクを取りにいく投球」をしたときに使われる表現で、そうした投球は打者に読まれると長打に遭う確率が高い。そこで、解説者が待ってましたとばかりに「置きにいってしまいましたね」と言うわけだが、まさに日本の失敗した3選手がそう見えたのは偶然だろうか。

 日本は1次リーグ最終戦のスペイン戦から先発3人を入れ替えながらも布陣は同じ3-6-1。中盤の6枚はボランチが2枚に、両ウィングバックに2人の攻撃的MF。前半は右ウィングバックに入った伊東が何度かスピードを生かした突破から中央へクロスを送るなど、好機の数でクロアチアを上回った。そんななか前半終了間際に1点をリードした。

 後半は攻めるのか、1点を守りに入るのかが注目された。とくに今大会ここまで攻撃のジョーカー的な役割を果たしてきた三笘の使いどころは気になった。勝利したドイツ戦、スペイン戦ではいずれもビハインドを負ったなかでの起用だったが、リードしたなかで使えるのか。

 三笘のドリブルが脅威となれば追加点のチャンスが期待できるだけでなく、相手の攻撃の機会を奪うことにもつながる。だが、同点となり先に動いたのはクロアチア。三笘の出場は後半19分まで待つことになった。

■この日も相手の脅威に

 本来攻撃を得意とする三笘のポジションは、これまでと同じ左ウィングバックだった。最終的に51%とボール支配率でクロアチアに上回られたものの、ドイツ戦やスペイン戦のように一方的に攻め込まれる状況でなかったことを考えれば、三笘をさらに高い位置で起用する手もあったように思う。

 延長前半終了間際には単独突破からシュートまで持ち込み、あわやゴールかというシーンを作り出していたが、この日も日本の攻撃陣で最も相手の脅威になっていたのは三笘のドリブルからの仕掛けだった。そんな武器を、ときに最終ラインで守備に参加せざるを得ない左ウィングバックで起用し続けたことは、果たして最善手だったのだろうか。

 日本はクロアチアの強みとされた前回大会最優秀選手(MVP)のMFモドリッチ(37)を中心にした中盤の攻防でもMF遠藤航(29)らで対抗し負けていなかった。ならば、より三笘の攻撃力を生かすために4-2-3-1への布陣のシフトチェンジは有効だったはずだ。

 右サイドを中心に複数のポジションをこなした伊東は、試合をこう振り返った。

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