長女の胃ろう交換をしている時に主治医の江田先生が次女にお腹の中のようすをファイバースコープで見せてくれた時の写真です。親としては医療に興味を持ってくれるのはうれしいですが、他の分野にもたくさんの選択肢があることを伝えていきたいです(江利川ちひろ提供)
長女の胃ろう交換をしている時に主治医の江田先生が次女にお腹の中のようすをファイバースコープで見せてくれた時の写真です。親としては医療に興味を持ってくれるのはうれしいですが、他の分野にもたくさんの選択肢があることを伝えていきたいです(江利川ちひろ提供)

「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。

 我が家の次女は、3人きょうだいの唯一の健常児です。

 病気や障害のある子どもの健常の兄弟姉妹を「きょうだい児」と呼ぶことがあり、ここ数年、きょうだい児のケアの重要性についてさまざまな研究が進んでいます。

 子どもに病気や障害が見つかると、パパやママは病児・障害児にかかりきりになり、きょうだいの世話が十分にできなくなったり、きょうだいの寂しさに気づく余裕を持てなかったり、時にはきょうだいがヤングケアラーとして家事や病児のケアを担う場合もあります。

 今回は、きょうだい児である次女のことを書いてみようと思います。

「私にしかできないことがある」と次女

 夏頃から、高1の次女の大学の志望校のオープンキャンパスに行く機会が増えました。親としては、今年はできるだけ多くの大学や学部を見て、本当に自分に合う分野を見つけてほしいと思っていたのですが、次女は私や夫がいないところで学校や塾の担任の先生と面談を重ね、私が「どこに行こうか?」と聞いた時にはすでに医療系の2つの学部に絞っていました。もうひとつの候補だった国際系の学部は「将来の仕事」として考えた時に自分がしたいことから少し外れるとのことです。

「やっぱり、うちの環境でいろいろ知ってしまうと、きょうだいはきょうだいなんだよ。ママはすぐ『ゆうやコウは関係なく考えて?』と言うけど、なんかそれも違うんだよね。留学のポスターより、【4/10はきょうだいの日】のポスターの方が印象に残った時に、自分でもあれ?と思った(笑)。

 私の場合は私もN(NICU=新生児集中治療室)で助けてもらったわけで、海外で働くのは私より向いてる人がいると思うけど、医療系の分野では私にしかできないことがあるような気がするんだよね。だから、もうこれで良くない?」

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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これはヤングケアラーなのか