※勤務先からの退職金とiDeCoの受取金を合わせて、この金額までなら税金がかからない早見表。2022年4月1日現在の退職所得の法令による計算。西原憲一税理士指導の下、編集部作成
※勤務先からの退職金とiDeCoの受取金を合わせて、この金額までなら税金がかからない早見表。2022年4月1日現在の退職所得の法令による計算。西原憲一税理士指導の下、編集部作成

 細かいことは、もういい。iDeCoで私はいくらまで非課税で受け取れるのかを知りたい人のための記事。「AERA Money 2022秋冬号」から抜粋してお届けする。

【写真】解説してくれた西原さん

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 iDeCo(個人型確定拠出年金)と退職金の合計額が高額だと税金がかかる場合があるが、そもそも「いくらまでなら税金がかからないのか」と普通なら考えるだろう。

 まずは結論から。本記事にも掲載した、非課税になる一括受け取り上限額を示した早見表を見てほしい。現在は勤続年数によって(20年以上だと税率優遇)退職所得控除の計算式が変わるため、勤続年数が長いほど「非課税受け取り額」が高額になる。

<編集部注>現在、退職所得控除に対する一律課税案が出ているため、変更の可能性があります

 さて、iDeCoでこの早見表の額を超えた金額に関しては一時金ではなく年金として受け取るほうがいいのだろうか。税理士でファイナンシャルプランナーの西原憲一さんに聞いた。

「年金として受け取る場合は公的年金等控除が使えます。iDeCoのお金を60歳から64歳までに受け取る場合、所得が1000万円以下なら年間で60万円までは非課税です。

 公的年金の受け取り開始年齢は65歳の人が多いでしょうから、60歳から64歳の間、働かない=所得がないなら、年間60万円まではiDeCoだけで公的年金控除枠を使えるということです」

AERA Money 2022秋冬号(AERA増刊)
AERA Money 2022秋冬号(AERA増刊)

 65歳以上だと1年当たりの公的年金等控除の非課税枠は110万円に増える。つまり、iDeCoのお金と公的年金の合計が年110万円以下なら税金はかからない。

「ただ、65歳以降に高めの老齢厚生年金を受給する人は、年間の受け取りを110万円以下に抑えることは難しいでしょう」

 公的年金等控除による非課税枠は退職所得控除ほど大きくないため、そもそもの受取額が大きい人が完全非課税にすることは難しそうだ。

 ここで素朴な疑問がある。退職金とiDeCoの一時金の受取時期をずらすことで、退職所得控除を2回受けることってできないのだろうか? 

「退職所得控除には『5年ルール』があります。これは、退職金をもらう前にiDeCoなどの確定拠出年金を一時金として受け取るときに適用されるルールです」

 5年ルール!? なんだろう?

「まず『iDeCoでつみたててきた年数』で退職所得控除を適用して、iDeCoのお金を受け取ります。iDeCoのお金を受け取ったあと、5年が経過したら退職金を受け取ります。

 このときは『勤続年数をもとにした年数』を使って再び退職所得控除を受けられるのです。iDeCoを先に受け取れば、退職所得控除を丸々2回使えるイメージです」

 ややこしいので具体例を。10年間つみたてたiDeCoの一時金を60歳で受け取った場合、40万円×10年=400万円までは退職所得控除が適用されて課税されない。

 その5年後、65歳に30年間勤務した会社を退職して退職金を受け取ったとする。この場合は5年ルールが適用され、勤続年数30年分の退職所得控除=1500万円を丸々利用できるのだ。自営業者が退職金代わりに加入している小規模企業共済も同様の扱いとなる。

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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iDeCoが先か退職金が先か、順番が大事