一冊の本を手にすれば、平凡な日々から一瞬でも逃れることができる。それだけではなく、新たな道標を得られ人生を豊かにしてくれる。「科学」「お金」「図鑑」のテーマから、それぞれの識者が本を紹介する。2022年11月14日号の記事から。

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■科学の世界に没入できる

湘南 蔦屋書店 店員・川村啓子さん「『ド文系』の人でも読みやすい」

湘南 蔦屋書店 店員・川村啓子さん(photo 本人提供)
湘南 蔦屋書店 店員・川村啓子さん(photo 本人提供)
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 人の世がどうであれ、生き物たちは命をつなぐために必死に生きていて、ナチュラリストたちの挑戦も終わることはありません。広い世界へ誘う様々なジャンルの自然科学の本から、「ド文系」の私でも読みやすい10冊をご紹介します。

『カメの甲羅はあばら骨』は公開中の映画の原作本です。人間の体をは虫類やほ乳類、鳥類に変換させることで、改めて生き物としての自分に気付き、他の動物を見る目が変わります。

『カメの甲羅はあばら骨』/川崎悟司/SBビジュアル新書
『カメの甲羅はあばら骨』/川崎悟司/SBビジュアル新書

『MAKINO』は来年の朝ドラの主人公、植物学者・牧野富太郎の生涯をたどる本。困難を乗り越えて日本初の本格的な植物図鑑を作った波瀾万丈の生涯を、牧野図鑑を数多く刊行している北隆館の新書でどうぞ。研究者の情熱に引き込まれます。

『オオカマキリと同伴出勤』は昆虫写真家による抱腹絶倒のエッセイ、『恐竜まみれ』は今この瞬間も地球のどこかで恐竜の骨を探しているかもしれない古生物学者の臨場感あふれる発掘記です。小さな虫の生態がわかるのも、誰も見たことのない恐竜の姿を知ることができるのも、すべてはフィールドで命を削る人たちのご苦労があってこそ。エキサイティングな読書体験をお約束します。

『大絶滅は、また起きるのか?』は、なぜ今6度目の大絶滅と言われているのか、長い時間軸の話が詰まっています。

 困難な時代に生きる私たちはときに悩み、揺らぎ、不安になります。生命誌研究者の中村桂子さんとホスピス医の内藤いづみさんの対談や、北海道の美宙天文台台長の佐治晴夫さんのエッセイは、日常と地続きの言葉で生きること死ぬこと、命について、科学の目線でやさしく語りかけます。働き盛りの世代にこそ読んでいただきたいです。

(構成/編集部・渡辺豪)

■広い世界に誘う

動物見る目変わる
『カメの甲羅はあばら骨』/川崎悟司/SBビジュアル新書

学者の生涯たどる
『MAKINO~生誕160年、牧野富太郎を旅する~』/高知新聞社編/北隆館新書

『MAKINO~生誕160年、牧野富太郎を旅する~』/高知新聞社編/北隆館新書
『MAKINO~生誕160年、牧野富太郎を旅する~』/高知新聞社編/北隆館新書

『オオカマキリと同伴出勤昆虫カメラマン、虫に恋して東奔西走』/森上信夫/築地書館

『恐竜まみれ 発掘現場は今日も命がけ』/小林快次/新潮文庫

『大絶滅は、また起きるのか?』/高橋瑞樹/岩波ジュニア新書

『クジラのおなかからプラスチック』/保坂直紀/旬報社

『日本に住んでいるなら知らないとヤバい!地学の授業』/大平悠麻/総合科学出版

『「役に立たない」研究の未来』/初田哲男・大隅良典・隠岐さや香/柏書房

『人間が生きているってこういうことかしら?』/中村桂子・内藤いづみ/ポプラ社

『この星で生きる理由─過去は新しく、未来はなつかしく─』/佐治晴夫/アノニマ・スタジオ

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