爆破されたクリミア橋。ロシアは報復としてウクライナにミサイル攻撃をしたほか、自爆ドローンを使った攻撃を続けている(AP/アフロ)
爆破されたクリミア橋。ロシアは報復としてウクライナにミサイル攻撃をしたほか、自爆ドローンを使った攻撃を続けている(AP/アフロ)

 ウクライナに侵攻中のロシア側から核兵器使用をちらつかせる発言が出ている。元駐ロシア外交官で著述家の亀山陽司さんに核使用の可能性などを聞いた。AERA 2022年10月31日号の記事を紹介する。

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──ウクライナ南部クリミアとロシアを結ぶ「クリミア橋」の爆発後、ロシアが報復としてミサイルや自爆ドローンでウクライナを攻撃しています。

 クリミア橋のような象徴的なインフラをウクライナ側の関与で破壊されたのは、プーチン政権の威信を傷つけるものでした。政権にとって最も大事なことは国と国民の生活を守るということですから、自国のインフラをはじめ市民生活が脅かされる状況は一番あってはいけないことなのです。

■非常に大きなストレス

 そういう意味でも、現在の状況はロシアにとって非常に大きなストレスです。ウクライナ4州の併合を宣言したことで、自国の領土だと主張しているところが戦いの前線に近づきました。4州併合時のプーチン大統領の演説を読むと、これまでの数ある演説にも増して緊張感の高いことがわかります。

──ロシアが核兵器を使用する懸念も出ています。

 私はプーチン大統領が核を使う「可能性」と、核を使う「覚悟」があるのかという問題は別のものだと思っています。ロシアの核戦略ドクトリン(基本原則)には「国の存続が脅威にさらされた状況」あるいは「核攻撃を受けた状況」とあります。ロシア側は、基本的にそれにのっとって判断すると発言しているので、そういう状況が作り出されるのかどうかということを今後も見ていく必要があります。ただ、そうなった時に核を使う覚悟をプーチン大統領が持ってしまったと言わざるを得ない状況にはなりました。

──ロシアが核兵器を使用するならば、どのような状況が予想されますか。第3次世界大戦の可能性はあるのでしょうか。

 私が非常に危険だと思っているのがザポリージャ原発です。この原発は前線に位置しています。今回のクリミア橋のように、ウクライナ側の攻撃によって原発事故のようなものが起こったとロシア側が判断した場合、核使用基準である「相手側の核攻撃」と同等と判断する可能性は十分にあります。

『地政学と歴史で読み解くロシアの行動原理』亀山陽司著、1133円(税込み)、PHP新書
『地政学と歴史で読み解くロシアの行動原理』亀山陽司著、1133円(税込み)、PHP新書
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