1980年代に社会問題化した旧統一教会の霊感商法や合同結婚式。当時、盛んに報道されていたのになぜ、次第に下火になったのか。そして今、メディアに問われる役割とは。AERA 2022年9月5日号の記事から紹介する。
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7月8日に銃撃事件が起きて、まもなく2カ月が経つ。山上徹也容疑者は、旧統一教会への恨みを募らせていたと供述。同居する義母が旧統一教会の現役信者だという40代女性は、旧統一教会の名称が報じられるようになった11日以降の状況をこう吐露する。
「事件が起きた当初は家族とも物騒だと話していましたが、容疑者の動機に旧統一教会が関連していたというニュースが出てからは、事件の話そのものがタブーなんです。テレビではワイドショーやニュースもつけないようにしています。正直、触れたくないのが本音です」
旧統一教会への関心は、日に日に高まりをみせている。一方で、朝日ジャーナル取材班の一員でもあったジャーナリストの有田芳生さんは、本質が見失われることを懸念している。
「政治家と統一教会の関わりを追及することはもちろん必要です。でも、メディアがこの30年ノーマークだった反動からか、『世界日報』の取材を一度受けていたことを大問題のように扱うのは行き過ぎだと感じています。今はそのつながりが政治にどう影響しているのか、金の流れはあったのかを見極めて問題提起する段階だと思います」
有田さんが「週刊文春」で合同結婚式の問題を取り上げたとき、ワイドショーやスポーツ紙が大きく報じた一方で、一般紙や報道番組が取り上げることはほとんどなかった。旧統一教会問題はエンタメ的に消費され、1995年の地下鉄サリン事件以降はオウム真理教に焦点が移っていく。
だからこそ、「旧統一教会とは何か」を伝え続けることが重要だという。有田さんは続ける。
「山上容疑者のものとみられるツイッターには、14歳の頃に旧統一教会により家族が破綻を迎えたことが綴られていました。そこから事件を起こす41歳まで、ずっと悩んでいた。山上容疑者の母親も、息子が大事件を起こしたのに、今でも教団に迷惑をかけたと言っている。そこまで思わせる教団はいったいどういう存在なのか分析が必要です」